この作品は、ドラえぽん様主催『ドラLASツヴァイ』投稿掲示板において、私、ガラガラ猿が書いたものを、加筆・訂正してまとめたものです。
 ある意味、続き物。



ガラガラ猿のSS劇場 其の壱

「もらったネタから、逃げちゃダメだ」シリーズ
『ネタ、螺旋を描いて』

 『紅い海、広がる世界で』
 『我は願う、それが真実でなきことを』
 『一つではなく、二つであるということ』
 『そこに、ネタがある限り』
 『想いを、その手に託して』


    LAS『紅い海、広がる世界で』


 どうして、こうなってしまったのだろう。
 少年は呆然とする。
 背後に広がる、紅い海。LCL。
 サード・インパクトを防ぐことは出来なかった。
 人々はもう、帰ってこない。
 そう、たった二人、ここにいる少年と少女を除いて、誰も……
 彼の前にいる少女は、横たわり、目を閉じている。
 ゆっくりと、手を伸ばす。少女の細い首筋に。
 と。
 少女が目を開けた。彼の頬に、華奢な手を伸ばす。
 そして、一言。

「……気持ち悪い……」



「もしかして、つわり!?」
「そ、あなたの子供よ♪」



   <後書き>

 旅に出ます。探さないで下さい(特にアスカ様)


   <ドラえぽん様から頂いたコメント>

 シンジ君が呆然としてたのは荒廃した世界にでしょうか、それともご懐妊のアスカ様に?ドラえぽんは後者にだと思いましたw
逃げちゃ駄目だぞ、シンジ君(笑

(初出:2003/12/11)


    LAS『我は願う、それが真実でなきことを』(『もらったネタから、逃げちゃダメだ』改題)


「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」
 彼は何度も口にしながら、両手を握る。
 脳裏をよぎる、恐ろしい考え。信じたくはない。だがもし……それが本当のことになったとしたら……
 どうすればいいのだろう?
 目の前には白い扉。その向こうには、彼の愛する少女がいる。今、彼女は何を思っているのだろうか。
 大きく息を吸って、彼はノブに手をかけた。引き返すことはもう、許されない。
「入るよ」
 薬の匂いが鼻をつく。その場で彼は立ち尽くす。
 向けられる、二対の視線。
 紅茶色の髪を持つ少女の蒼い瞳が、常ならぬ光を帯びて彼を射抜く。
 蒼天色の髪を持つ少女の紅い瞳が、非難めいた光を帯びて彼を突き刺す。
 ゴクリ。
 つばを飲み込む音が、とても大きく響いた気がした。
 ゆっくりと、少女が口を開く。彼は彼女の瞳から目をそらすことができずにいた。



「おめでただって♪パパシンジ♪」
「そんな!?安全日だって言ったのに!!」
「碇君、逃げちゃ、ダメ」


   <後書き>

 ドラエぽんさんの言葉にインスパイアされて書いてみました。ネタ使い回して数稼いでみたり。


   <ドラえぽん様から頂いたコメント>

 まさかレスからお話をふくらましていただけるとはっ。・・・シンジ君超せつねえ・・っ∀・)ニヤリ

(初出:2003/12/12)


    LAS『一つではなく、二つであるということ』


「そうか、そういうことかリリン!」
 少年は、その体躯からは想像できない大声で叫んだ。
 そう、彼は悟ったのだ。
 真実を。

 彼は常に一人だった。
 その存在こそ、まさに孤高と呼ぶにふさわしい。
 神の使い、使徒、タブリス。それが彼の二つ名。
 否。真実の名。渚カヲルという名こそが、偽りの名だったのだ。
 だが一人の少年との出会いによって、彼は気付いてしまった。与えられた仮の名こそが、己の本質なのだと。

 好意、を、抱いてしまったのだ。
 優しすぎて、自らを傷つけ、その痛みに耐えかねて逃げ出してなお、優しさを求める少年に。
 だが少年の心は、一人の少女で占められていた。
 そう、彼は『初めて求めた』モノを、手に入れられなかった。
 彼の心に綻びが生じた。

(リリン、これが君が望んだことなのかい?)
 孤高ではなく、群を。一つの完全なる生命としてではなく、多数の不完全を。
 何故、リリンはその道を選んだのか。彼には不思議でしょうがなかった。完全であることこそが、世界の真実なのではないか。ヒトもまた、愚かな計画の名の下に、一つになろうとしている。
 だが今なら。彼には理解出来た気がする。
 不完全で、だがそれ故に求めるからこそ、ヒトはアダムを、リリスを手に入れることが出来たのだと。
 そして、求める心を刻むために、ヒトは二つの形に別れたのだ。それらは、互いが求め合わなければ、種を残すことが出来ない。
 すなわち、男と女。
 全て仕組まれていたのだ。リリンによって。
 彼女は選択を、己の子達に託した。一つになるか、それとも、群として生きるか。そのために、『求める心』を与えた。もしも、ヒトがカヲルと同じ、一つにして完全なる存在であればきっと、何も求めなかった。

 渚カヲル……タブリスは、何も求めたことなどなかった。いや、これまでに現れた使徒達もまた、同じ。アダムに触れ、無に帰りたい、という願いは、彼らにとってあまりに当たり前のものだったから。
 いわば、本能。心が求めたものではない。
 ヒトは、違う。種を残そうという意思は、確かに本能なのかもしれない。
 だがヒトは、愛という幻想を抱いてしまった。

 不完全であるが故に。
 そして二つの形に別れたが故に。
 人は互いに補い合う。自らの心の隙間を埋めるために、求める。代償として、求めに応じる。いつしかその行為に、名が与えられた。
 愛。
 それは求める心と、与える心の融合したモノ。

 ただ求めるばかりでなく、与えることを、リリンの子らは知ったのだ。
 どちらも、彼が今までに感じたことのない感情。
 彼が好意を抱いた少年が、少女に向けている想い。それが、愛というものなのだろう。
 そして、完全なる使徒タブリスともあろう者が、不完全な存在に抱いてしまった想いも、また。
 生と死が等価値であり、また孤高であればこそ、気付かないモノもある。気付いてしまったことが、彼の不幸と言えるだろうか。
 
(ボクニトッテハ、『セイ』ナドムイミダケレド)
 少年が彼女に求めるものは、まさしくその『セイ』なのだろう。彼女が少年に求めるのも、同じ。
 ならば、彼は、少年と並びたつことは出来ない。彼には、それを与えることが出来ないから。
(キミタチニハ、『セイ』ガ、ヒツヨウナンダ)
 心の内で呟いて、彼は心を決める。
 少年の前から、消えることを。
(ダケドネ、シンジクン。スグニマタ、アエルヨ)
 彼の思いは、少年に届くことなく、暗闇に飲み込まれていった。




「転校生の渚カヲルです♪歌はいいね〜♪」
「このナルシスホモ、今度は女装して、それで女のつもりかっ!!弐号機で踏み潰すわよっ!」
「カヲル……さん」
「バカシンジもっ!!紅くなってるんじゃな〜いっ!!」


   <後書き>

 副題「もらったネタから、逃げちゃダメだ再び」。
 『セイ』→性。苦しい。
 どこまでドラえぽんさんとのキャッチボールを、続けられるだろうか。チャレンジだ。


   <ドラえぽん様から頂いたコメント>

 やられたあ、って感じです。そうくるとは(笑
 最後の四行まではシリアスものだとみごとに騙されました。
 シンジの「カヲル・・・さん」に思わす笑ったッスよ(笑
 前半のシリアスパートもうまいなあ。ガラガラ猿さんって言葉の意味掛けがウマイですよね。
 ところで、このカヲル君は首チョンパ後のカヲル君ですよね。ってことはアラレちゃんみたいにアタッチメントになってんのかな・・・まあ、使徒だからねぇw

(初出:2003/12/13)


    LAS『そこに、ネタがある限り』


 2015年、渚カヲル調査委員会発足。
 設立者は惣流=アスカ=ラングレー。
 目的は、彼が何者かを調査すること。
 きっかけは、碇シンジが彼と仲が良く、そのため、彼女と一緒にいる時間が少なくなってしまったため。
「つまり、嫉妬ね」
「うるさいっ!!」
 ヒカリに言い返すアスカ。顔が赤いのは図星だからか。
「ところで、どうして私はここにいるの?」
「委員長だから」
「……は?」
「だからー、渚カヲル調査委員会委員長なの、ヒカリは」
「……どうして?」
「委員長だから」
「……不潔よっ!」

 使い物にならない委員長は置いて、一人、活動を開始する副委員長アスカ。
「調査、といえば、まずは事情聴取ねっ」

<事情聴取:綾波レイ>

「アンタさぁ、渚カヲルのことで、知ってることある?」
「ヒトウバンよ」
「……え?」
「飛頭蛮。日本語では『ろくろ首』と読み、首が長くなる妖怪のことだけれど、ヒトウバンと読む時は、中国やベトナム、ジャワ島などで見られた妖怪のことを指すわ。体から首から上だけが離れるの。渚カヲルは首から上だけになったのに生きていた。あれはヒトウバンに間違いないわ」
「変なこと知ってるのねぇ。そんなこと言ったら、どこぞの女は巨大化したじゃない」
「知らない。アタシは三人目だから」
「三人目ってアンタのことでしょうが!?全く、見上げ入道の女版、さしずめ、見上げ女郎ってとこね」
「……あなたこそ、よく知ってるわね」

<事情聴取:葛城ミサト>

「はーい、死んだはずなのに、『一つになったらエビチュが飲めない』って帰ってきたミサト」
「……説明的かつひどいセリフね、アスカ。それが保護者に対して言うこと?」
「ところで、聞きたいことがあるんだけれど」
「私の話は聞かないのね……」
「いじけないの。渚カヲルのことについて聞きたいんだけれど」
「フィフス・チルドレンのこと?弱いわよ」
「え!?アイツ、仮にも使徒なんでしょ?強いんじゃないの?」
「弱いわよ。私に負けるぐらいなんだから」
「うーん、意外ね。まあ確かに、見た目はなよっとしてるけれど……」
「あの程度で強いなんて言えないわね。エビチュ一樽も飲めないんだから」
「飲み比べしてんじゃないわよっ!未成年相手にっ!」

<事情聴取:碇シンジ>

「渚カヲルのことについて聞きたいんだけれど」
「カヲル君?そうだなぁ、初めて会った時に、初対面じゃないっていう気がしたかな……前から知っていたような……」
「ふぅん。ところで、アタシと初めて会った時は、どう思ったの?」
「暴力的な怖い女……って何、言わせるんだよっ!?」
「うるさいっ!そんなこと言う口はこうしてやるっ!」
 しばらくお待ち下さい。
「プハッ。いきなりキスするなんて、ひどいじゃないか」
「口を塞ぐにはこれが一番効果的なのよ♪」


「結局、何もわからなかったわね〜」
 ベッドに体を沈めるアスカ。
 他の人間にも聞いてみたのだが、成果は芳しくなかった。使徒である、ということと、ゼーレの手先であった、ということ以外、何もわからずじまい。
「うーん、気になるといえば気になるのは、レイの発言と、シンジの感想ね」
 首だけになっても生きていた。つまり、本体は首、ということか?
 そして、シンジが言っていた、彼に感じた既視感。
 ……以前から知っていた人物、ということか?
 ふと、昔読んだ、古い時代を扱ったミステリーを思い出す。それは、死体の首を切って別のものとすり替えることで、身元を間違わせる、というものだった。
 ……首だけでも生きていける……首を取り替える……以前から知っていた……彼が現れるのと入れ違いに消えたのは……
「!?」
 突然、体を起こす。
「そう……そういうことだったのね……」
 体が震える。自分の考えついたことが恐ろしい。
 だが、真実はこれしかない。そんな手ごたえがあった。
「決着は……明日、つける……」
 心が痛い。きっと真実を明かせば、シンジの心を傷つけるだろうから。
 だが、それでも。気付いてしまった以上、嘘をつくことは出来ない。シンジにも、自分にも。

 翌日、教室。主要メンバーのほとんどが集まる中、アスカはつかつかとカヲルに近づいていき、指を突きつける。

「渚カヲルっ!とうとう、あんたの正体がわかったわっ!」
「へぇ、何なんだい?僕が使徒だということは周知の事実だよ?」
「アンタの正体……それはね……」
「それは?」

「ケンスケよっ!渚カヲル=相田ケンスケなのよっ!!首を替えたのねっ!」

「……よう、惣流。俺がどうしたんだ?」
「おうっ、ケンスケ。久しぶりやな。どないしとってん?」
「ああ、ずっと疎開しててね。やっと今日帰ってきたんだよ。で、惣流。俺がどうかしたか?」

 相田ケンスケ、惣流=アスカ=ラングレーによって殲滅さるる。
「お、俺が何をした……」
「まぎらわしいことしてるからよっ!!」


   <後書き>

 副題「もらったネタから、逃げちゃダメだ三度」
 渚カヲルの首はアタッチメント、という言葉から出来た作品。ちょっと無理があるかな。


   <ドラえぽん様からいただいたコメント>

 ケンスケかよ!
 そこでケンスケを持ってくるとは(笑

 うまいなあ、ネタを振ってはみたものの良くこんなにうまく書けるッスね〜。
 しかし、良く飛頭蛮とか知ってますね。確かこれって輸入妖怪でしたっけ。
>「口を塞ぐにはこれが一番効果的なのよ♪」
 あひゃ〜(・´д`・

 ガラガラ猿さんはホント落ちづけがウマイですね。
 ケンスケの身体のカヲルでも気付かないような気がするのが何か嫌ですよね(笑
 そういや、そういう漫画あったなあ。寄生獣だったかな。ミギー!

(初出:2003/12/14)


    LAS『想いを、その手に託して』


 その日、相田ケンスケが目覚めると、右手が渚カヲルになっていた。
「ミギーーーーーッ!!」
「フフフ、そんなに驚かないでくれたまえよ」

 何度も精神崩壊しかけながらも、がけっぷちで踏みとどまるケンスケ。とりあえず自己紹介。
「俺は、相田ケンスケ。お前は、誰なんだ?」
「フフフ、僕の名前は渚カヲル。ケンスケ君、か。好意に値する名前だね」
 その後、会話を続けることによって、とりあえずケンスケは、状況を把握。

一. 渚カヲルが彼の右手に宿った理由は、カヲルにもわからないということ。

二.
分離は出来ないということ。彼の右手に現れる時は、上半身までしか出られないということ。

三.
カヲルには自身について、自分の名前以外の記憶がないということ。ただし、一般常識は持ち合わせているということ。また、ケンスケでは触れえない特殊な知識についても、精通しているということ。

四.
カヲルが望めば、ケンスケの右手の姿に戻れるということ。戻った時には、右手はケンスケの意思に従うということ。

五.
しゃべることなく、意思を伝え合うことが出来るということ。しかし、危険を伴うために、余程のことがない限りそうはしないということ。


「音を介さずに、心を伝えることは出来るけれど」
 カヲルは、彼の目を見ながら喋る。
「そうするためには、ATフィールドを中和しなければいけないんだ。それはとても危険なことなんだよ」
「ATフィールド?何なんだよ、それ」
「人が持つ、心の壁さ」
 それ以上、カヲルが答えることはなかったので、ケンスケも、問いかけることはしなかった。
「俺がもし、お前に用がある時はどうすればいいんだ?」
「心の中で呼びかけてくれればいいよ。僕にはそれで聞こえるから」

 二人の、奇妙な共同生活が始まった。
 最初のうちはカヲルの存在に怯えていたケンスケも、彼の気さくな性格と、豊富な知識に触れるにつれ、徐々に親しんでいった。カヲルの知識はかなり偏っていたので、ケンスケが彼に教えることもしばしばだった。
「ん?この曲は、何て言うんだい?」
「これか?ベートーベンの『歓喜の歌』だよ。EUの国歌にもなった曲さ」
「いいねぇ。好意に値するよ」

 そして、使徒襲来。
「あのロボットは……」
「あれはね、ケンスケ君。リリンの造りあげし人造人間なんだよ。エヴァンゲリオンと名づけられた、ね」
 どうしてそんなことまで知っているのか?
 問いかけようとしたケンスケは、右手に現れたカヲルの紅い瞳が、悲しく、なおかつ辛そうに揺れていることに気付いて、口を閉ざした。

 第四使徒、シャムシェル襲来。
 エヴァ初号機が使徒を撃退後、ケンスケはこってりしぼられてから、自室に戻った。
「カヲル……出てこれるか?」
「何だい、ケンスケ君」
 右手が形を変えて、渚カヲルの姿をとる。
「今日、お前、俺を助けてくれただろ」
 それは、エヴァ初号機が山に飛ばされてきた時。彼は確実に、自分が死ぬと思った。
 初号機の拳は、握られたままだったから。だが気が付くと、ケンスケと友人のトウジは、開かれた拳の指の間にいた。
「フフフ……どうだろうね」
 謎めいた笑みを浮かべるカヲル。その顔を見て、ケンスケは自分の推測が正しかったと確信した。
 おそらく彼が、何らかの力を使って……例えばエヴァを一瞬、支配するとかして、助けてくれたのだ、と。
「すまない……ありがとうな、カヲル」
「……僕にとって君は、好意に値するよ……」
 言うとカヲルは、右手の姿に戻っていった。一人、右手を見つめながら、ケンスケはその言葉の意味を考える。何故か、心にぬくもりのようなものが生まれていた。

 そしてある日、ケンスケは帰宅途中に、意識を失った。次に気がついた時、彼は自室に戻っていた。
「確か……コンビニで葛城一尉に会って……そこまでは覚えてるんだが……」
 家族の様子を伺うに、異常があったようには思えない。首をかしげているところに、碇シンジから電話があった。明日、国連艦隊に乗り込むための待ち合わせ時間を伝えに。
 とっさに機転を利かせて話をあわせたが、どうやら葛城一尉と自分が話し合って決めたことらしい。もちろん、身に覚えのないことだった。
「カヲル……お前がやったのか」
「……そうだよ、ケンスケ君。君があの艦隊に興味を持っていることは、知っていたからね」
「どうやったんだ?」
「何、少し、彼女の心に触れただけさ。そのために、君の体を借りさせてもらったけれどね」
 つまりカヲルが望めば、いつでも自分を操れるということか。それに気付いて、ケンスケは愕然とする。
「……すまない……」
 彼の内心に気付いたのだろう。カヲルが目を伏せる。
「……いや、俺のことを思ってやってくれたんだろう?俺こそ、お礼を言わなきゃな」
 そうやって笑ったケンスケの瞳には、一点の曇りもなかった。

 だがそれ以後、彼は時折、自分が意識を失うことがあることに気付いていた。どうやら、カヲルが自分の体を借りて、何かをしているらしい。それもおそらく、NERVに関わることで。
 新型エヴァの情報や、誰かが新たにチルドレンに選出されるであろうことなど、知らないはずの知識を、彼はいつの間にか手に入れていた。人の前では、自分のハッキングの腕前のせいにしていたが、事実はおそらく、カヲルがケンスケの体を操っている時に得た知識なのだろう。
 そうと知っても、ケンスケはカヲルに何も言わなかった。もはや彼にとって、カヲルはかけがいのない友人となっていたから。
 様々なことを話した。一緒に色んなところにも行った。カヲルが好きだと言ったから、部屋にクラシックのCDが増え、自分もその音楽に引き付けられた。彼はケンスケの撮る写真にも、興味を示してくれた。時折、彼に批評を頼むと、実に的確な評価を下してくれた。カヲルの言葉は感性的でわかりづらかったが、いつの間にかケンスケは、それにも慣れてきていた。
 これまで一人でしていたサバイバル・ゲームも、彼が加わることで楽しくなった。一人テントに寝ていても、カヲルと話していれば、寂しさは感じなかった。彼と二人で、草原の向こうに仮想の敵がいると考え、どうやって攻略するかを話し合ったりもした。時には、敵味方に分かれて、地図上に部隊を散開させ、互いに攻撃しあうゲームをすることもあった。
 一つ心ではないけれど、同じ体を共有する、親友。ケンスケはカヲルのことをそう思っていたし、だからこそ、彼の為すことに口を出さないでおこう。そう誓ったのだった。
 だがそんな時も、終わりを告げる。

「カヲル……出てこいよ」
 右手に呼びかけると、すぐに彼が姿を現した。せつなそうな顔を見た瞬間、ケンスケは自分の直感が正しかったことを知った。
「俺……明日、疎開することになってる」
「……知っていたさ……」
「……お別れなんだろ?」
 口を閉ざすカヲル。いつも笑みを浮かべている口が、悲しそうに歪んでいる。
「……やっぱりな……何となく、そうじゃないかと思ってたんだ……」
「……すまないと思っているよ……君には迷惑ばかりかけたからね……」
 カヲルの言葉に、ケンスケは首を振る。
「いや、いいんだ。お前には、お前のやることがあるんだろうからな。どうせ、エヴァとか、シンジに関することなんだろ?」
 時折、彼が学校でこっそりと姿を現す時、その目がシンジやアスカ、レイに向けられていることに、ケンスケは気が付いていた。
「シンジ達のこと、頼めるか?」
「……僕には保障できないよ」
 苦しい表情を浮かべるカヲルに、ケンスケは心を決める。
「カヲル、俺はお前のことをかけがえのない親友だと思ってる。トウジや、シンジ以上だと。だから……だから……出来れば、俺は、またお前と会いたい……」
(たとえ、シンジ達に会えなくなっても)
 言葉を飲み込むケンスケ。それを言ってしまえば、よりいっそう彼を苦しめるだろうと知っていたから。
 ケンスケの目に光る涙。そして、カヲルの紅い目もまた、かすかにゆらいで。
「……やっぱり君は、好意に値するよ」
 そう告げた後。ケンスケは自分の心に、何かが触れたことに気が付いた。伝わる、想い。それがカヲルの心だと気が付いた時、彼は右手に姿を戻していた。
 翌日、第三新東京市を旅立つ直前まで、彼はカヲルに呼びかけ続けたが、答えはなかった。だが、悲しみの波動、とでも言うのだろうか?自分のものでない感情を、ケンスケは感じていた。


 渚カヲルは、姿を消した。
 ケンスケは、半身をもがれたかのように思いながらも、目を閉じれば感じるカヲルの息吹に、傷ついた心を慰められていた。


 そして、時が経ち。
「!!」
 疎開先の家でぼんやりしていたケンスケは、唐突に体を起こす。胸の内に広がる喪失感。
「カヲル……」
 彼は悟った。今、この瞬間に、友が命を散らせたことを……
 その晩、ケンスケは一人、部屋にこもって、涙を流し続けた。


 同じ頃。彼の預かり知らぬところで、世界が動いていた。

 閃く光。溶け合う心。
 それが、サード・インパクトだったと、ケンスケは後に知る。

 視界を覆う白い光の中に、ケンスケは、渚カヲルの赤い瞳を見た気がした。


 サード・インパクトの後。
 紅い海から、人々が帰ってくる。ケンスケも、また。

 彼は、カヲルの目を思い出させる色の海の前で、たたずんでいた。期待は抱いていない。しかし……
 もしかしたら。
「今日も、帰ってこなかったな」
 ポツリ。呟きは風に流されて消えて。
 立ち上がり、家路につこうとする。

「ケンスケ君」

 唐突にかけられた声に、彼は信じられない思いで振り返る。その視線の先には……
「君が覚えていてくれたおかげで、僕もまた、ここに戻ってこれることが出来たよ……ありがとう」
「カヲル……」
 人目もはばからず、ケンスケは大声で泣いた。あの時とは違う、歓喜の涙は、とても心地が良かった。
 ケンスケが差し出した右手を、カヲルが握る。万感の想いをこめて、強く、優しく。
 二人の絆は、そこから始まったのだから。



「って話を考えたんだけど、どう?」
「アスカ……間違いを認めずに、辻褄を合わせようとするのは、どうかと思うよ……」
 渚カヲル=相田ケンスケ説を、ケンスケ登場によってあっさりと覆されてしまったアスカ。一日考えて、どうやらそんな話を思いついたらしい。彼女の手には、旧世紀のマンガが握られている。タイトルは『寄生獣』。参考にしたらしい。どこがどうとはわからないが。
「うーん、やっぱり?」
 珍しく素直に自説を引っ込めるアスカ。シンジに言われたこともさることながら、自分でも無理があると思ったらしい。
「あーあ、結局、渚カヲルの正体、わかんないままなのよねー」
「カヲル君は、カヲル君だよ」
 予鈴が鳴って、二人は自分の席にそれぞれ戻っていった。
「やれやれ、アスカも変なこと考えつくよなー」



「フフフ、惣流君の想像力は素晴らしいね」
「全くだな。よくもまあ、あんだけ考えられるもんだ」
 アスカの話を聞くとはなしに、聞いていたらしいカヲルとケンスケ。
 二人が一瞬、互いを見つめあい。
 そして笑いあったことに。
 アスカは、気付かなかった。



   <後書き>

 副題「もらったネタから、逃げちゃダメだ又」
 変化球が来たぞ。無理やり打ってやる。
 これもまたLAS。どこがって?『L(ラブラブ)A(相田)S(使徒タブリス)』。ほ〜ら、LAS。バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ!……めっちゃ苦しい。


   <ドラえぽん様から頂いたコメント>

 スゴイ、スゴイ斬新ですよ。ガラガラ猿さん。
 マジで感動したッス。ケンスケとカヲルが好きになりそうッス。あんなネタふりでこんなに感動的な話を書いていだけるとは・・・

>「って話を考えたんだけど、どう?」
>「アスカ……間違いを認めずに、辻褄を合わせようとするのは、どうかと思うよ……」
 には笑いました。超アスカ様らしい(笑

 あのケンスケとカヲルにこんな感動的なサイドストーリーがあったとは・・・(´Д⊂泣ける

 これを読んで、シンジ君がアスカ様のミギーになっちゃうゴロゴロな設定がふと頭に浮かびました。ドラえぽんが書いたら間違いなくエロになりそうだw

(初出:2003/12/15)



 まだまだつらつらと続きます。投稿掲示板も見て下さいまし。


                               ガラガラ猿 拝


ガラガラ猿さん、いつも投稿ありがとうございますっ (^ ^
ドラえぽんが何気なく振ったネタを使ってこんなに面白い作品を書けるなんてすごいッス。
時には爆笑、時には感動させていただいてます。
特に、寄生獣で振ったネタから作って頂いた「右手左手シリーズ」は投稿掲示板にてすごい事になっております。面白いッスよ〜。こちらも要チェックです。

さあ、質の高い短編を次々と生み出してくれるガラガラ猿さんに是非ともご感想を!
ガラガラ猿さんへのご感想はこちらへお願いします。
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