『この道は、家へと続く』

ガラガラ猿



 アタシには家がなかった。

 物理的な意味じゃない。
 バカシンジとミサトと住むあの場所。住所を書くことを求められたら、アタシは迷わずそこを書いただろう。
 だけど、どこにいても。
「ここはアタシの家じゃない」
 その思いが心を支配する。バカシンジをからかっていても、ミサトをけなしていても。
 自分がそこにいる、と思えなかった。お客様気分、とでも言うのだろうか?現実との乖離。
 そこにいるアタシは、アタシじゃなかった。
 ならばアタシは、どこにいるのだろう? 
 強いて言えば、エヴァの中か。
 エヴァに乗っている時だけ、アタシは思うことが出来た。
「ここがアタシの居場所だ」
 と。
 だけど。
 シンクロ出来なくなった時、アタシは家を失った。
 戻るべき場所を。

 追い出されたようなものだった。拒絶されたアタシはさまよい、やがて心を壊す。
 次に気が付いた時。
 アタシは弐号機の中にいた。そして確かに感じた。ママの存在を。
「アタシを守ってくれる!」
 歓喜。だがそれは儚い。
 弐号機は、破壊された。

 ママ。
 アタシはママの中にいた。それはつまり、胎内にいたということなのだろう。そしてそこにしか、居場所を見つけられなかったアタシは、胎児でしかなかった。
 弐号機を、ママを失って、アタシは放り出された。
 全てを失った。
 世界を拒絶するアタシに差し伸べられた手。

「キモチワルイ」
 そう感じ、言ったのは、多分。
 アタシがとうとう、生まれたから。
 赤ん坊は生まれるときに、大きな声で泣く。それはきっと、あまりに居心地のいい場所から、よどんだ世界に放り出されたため。
 言葉を喋れるなら、きっと、アタシと同じことを言うんじゃないかしら。

 この世界に生まれたアタシ。
 もう、ママに守られるだけの存在ではいられない。
 アタシは居場所を見つけなくてはいけない。
 だけど。
 もう、アタシは知っている。
 どこに、それを求めればいいのか、を。


 暖かい彼の腕の中に包まれて、アタシは思う。

「ここがアタシの家」

 と。




*この作品は、ドラえぽん様主催『ドラLASツヴァイ』投稿掲示板に、私、ガラガラ猿が書いたものを、加筆・訂正したものです。



あの「気持ち悪い」という言葉。あれは否定の言葉ではなく、アスカ様の新しい誕生の息吹だったんですね。
胎内から現実への誕生。すばらしい解釈のひとつだと思います。
ドラえぽんは非常にこの作品が大好きです。素敵な作品ありがとうございました(^ ^

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