「ふふっ。こんなところかしらね」

 あたしはテーブルの上に並べられた手作りチョコレートを見ながら満足の笑みを漏らした。

 明日は2月14日。そう、いわゆるバレンタインデーってやつよ。

 今年のチョコの出来は上々ね。去年は悲惨だったけど。

 あたしはテーブルの上の特製トリュフを見ながら去年のバレンタインデーを思い出していた。

 


明日香−REGENERATION− 2
  バレンタイン メモリー
By ZUMI


 

 一年前の同日。

「ねえ、明日香。明日のバレンタインどうするの?やっぱりチョコを買ってきたの?」

 光が昼休みのお弁当を食べながらそう聞いてきた。

「え?そうねえ。一応買ってはあるんだけど。手作りに挑戦しようかと思ってるの」

「へえー?明日香がねえ。変われば変わるもんね」

「なによ?そう言う光はどうなのよ?鈴原にチョコあげるんでしょ?」

「え?あ、あたしはいいわよ…」

「どうして?鈴原に告白したんでしょ?あげないと本気にしてもらえないかもよ?」

「うん。だって、鈴原はあたしのこと好きだって言ってくれないもの」

「えー?どうして?てっきり相思相愛かと思ってたのに。中学以来じゃないの、光たちだって」

「そうなんだけど…」

 なんだか光の表情が沈んでる。

「そうだ!ねえ一緒にチョコレート作ろう?」

「え?」

「だってあたし一人じゃ自信ないもの。光はお料理得意だし。ね?」

「んもう。明日香ったら」

 でも、光はにこっと笑ってくれた。

「それじゃ、決まりね」

 あたしたちは放課後、材料を買って帰ることを決めた。

 

***

 

 放課後。

 帰る準備をしていると、真嗣がやってきた。

「明日香、帰ろうか」

「あ、ごめん。光と買い物していくって約束しちゃったの」

「え?洞木さんと?」

「ええ。ごめんね」

「そ、そうなんだ…」

 真嗣はがっかりしたような顔をしている。

「後で行くから。いいでしょ?」

「う、うん」

 いったん去りかけた真嗣が戻ってくると、あたしの耳に口を寄せた。

「ちょっといい?」

「え?今?」

「うん」

 真嗣の吐息が耳にかかってちょっとぞくってしちゃった。

「光。ちょっと待っててくれる?」

「なあに?」

「あ、真嗣がちょっと」

「なあんだ。碇君がお呼びなのね。わかったわ。行ってらっしゃい」

 光が意味ありげに笑いながらあたしを送り出した。

 あたしは真嗣について廊下を歩く。

「ねえ、どこへ行くの?」

「あ、うん。そこまで」

 変な真嗣。話があるならどこでもできるのに。

 それとも、他人には聞かせられない話なのかしら?

「あ、ここでいいや」

 真嗣が示したのは音楽室だった。

 え?音楽に関係あるの?

「ねえ。なんなのよ?」

「うん、あのさ…」

 真嗣はあたしに近づくと、あたしを抱きしめた。

「あ、ちょっと?真嗣?」

「明日香」

 真嗣にキスされた。ちょ、ちょっとお!

「ん、む…」

 しばらく真嗣は唇を離してくれなかった。

 ようやく唇を離してくれたけど、あたしを抱きしめる力は緩めてくれない。

「なんなのよ?いったい」

「ごめん。どうしても待てなくって」

「んもう」

 あたしも真嗣を抱き返す。

「困った男の子ねえ。そんなに待てないの」

「だって、明日香が勝手に約束しちゃうんだもの」

「ごめんね。だってチョコを買いに行こうと思ったのよ」

「あ、そうなんだ」

 ようやく真嗣が笑ってくれた。

「そうよ。楽しみにしててね」

「うん」

 あたしたちはもう一度キスした。

 あ?!真嗣の手があたしの胸を触ってる。

 だめよ。そんなところ。感じちゃうじゃない。

「明日香」

 真嗣があたしのうなじにキスをする。

 だめ。どうにかなっちゃう。

「真嗣、やめて」

「どうして?」

「だって、こんなところじゃいやよ」

「そう?」

「また後で。ね?」

「今日は母さんたちが遅いんだよ」

 そ、そんなこと言われても。

「あとで来てよ」

 んもう。最近、真嗣ったらそればっかり。

 そりゃ、あたしだってするのは好きだけど。

 時と場合ってものがあるじゃない。

「あ、でも…」

「だめなの?」

「だめじゃないけど…。あん…」

 真嗣ったらスカートの中にまで手を入れてくるんですもの。

 結局、後で訪ねて行くことを約束させられちゃったの。

 

***

 

 手作りチョコレートのセットを買って、光の家に行くことにしたの。

「あ、明日香さん。いらっしゃい」

「こんにちは。望ちゃん」

「今日はなあに?あ、チョコレートのセットを買ってきたんだ。明日香さん、チョコレートをあげるのね?ねえ、だれに?」

「望、あっちへいってなさい」

「えー?いいじゃない。光おねえちゃんのいじわる」

「あら、望ちゃんもチョコあげたい相手がいるのかなあ?」

「…っそんな!」

 あらあら。赤くなっちゃって。かわいいわね。

「えー?望にそんな相手がいるなんて初耳よ」

「光、いつまでも子供だと思わないほうがいいわよ。望ちゃんだってもうじき中学生でしょ?」

「それはそうだけど」

「じゃ、いっしょに作りましょう?光だって人のこと言ってる場合じゃないわよ」

「わかってるわよ」

「えー?お姉ちゃんもチョコあげるんだ。やっぱり鈴原のおにいちゃん?」

「んもう!黙ってなさいよ!」

 光もかなり家だと横暴なのねえ。ちょっと新しい発見をした気分だわ。

 

***

 

 なんとかかんとか十五センチほどのハート型のチョコを作ることができたわ。

 まあ、ほとんど光に作ってもらったようなものだけどね。

 やっぱり手際が違うもの。これは少しは見習わなくちゃ。

「で?どうするの?やっぱり明日学校で手渡すわけ?」

「え?いやよ、そんなの」

「じゃ、どうするのよ?」

「靴箱に入れとく」

「ひーかーりー」

「だって」

「あーもう。しょうがないわね。いっしょに行ってあげるわよ。それならいいでしょ?」

「ありがと、明日香」

 そんなにほっとした顔をしなくたって。

 まあ、だいじな光のためだもの。そのくらいしてあげなくちゃ。

 

***

 

 家に帰り着くと、すっかり暗くなっていた。

「遅かったわね、明日香ちゃん」

 ママがキッチンから顔を出す。

「あ、ヒカリんとこに寄ってきたの」

「そう。遅くなるときは連絡して頂戴」

「はあい。以後気を付けます」

「すぐに夕飯よ。手を洗ってらっしゃい」

「え?」

「なあに?」

「ううん。なんでもない」

 困ったわ。とても真嗣のところなんて行けないじゃない。

 部屋に戻って真嗣に電話する。

<もしもし?>

「あ、真嗣?明日香よ」

<明日香?遅いじゃないか。早くしないと母さんたち帰って来ちゃうよ>

「それなんだけど、ママが帰ってるのよ。ちょっと出られそうにないの」

<えー?そんな>

「ごめん」

<ちょっとでも出られない?>

「すぐに食事だっていうもの。あ、そうだ。こっちに食べにいらっしゃいよ。おばさま、遅いんでしょ?」

<ええー?>

「なに厭がってるのよ?うまくすればあたしの部屋で…」

<すぐ行く>

 まったくもう。

 初めて経験してから二ヶ月たって、ようやく慣れてきたところだっていってもねえ。

 そんなに男の子って、いつでもしたいものなのかしら。

 あたしはキッチンに戻ると、真嗣のことをママに伝えた。

「あら、そうなの。だったら真嗣君も食べにきてもらいましょう。電話してちょうだい」

「はあい」

 あたしはリビングに戻ると真嗣を呼ぶために電話機を取った。

 もっともその前に真嗣が家に来ちゃったんだけど。

 

***

 

 食事が済んで、真嗣とあたしの部屋でくつろいでいたの。

 もっとも真嗣はあたしに触りたがってしょうがなかったけど。

「ちょっと、待って」

「どうして?明日香だっていいって言ったじゃないか」

「だって、ママがいるのよ」

「だから、少しだけ」

 真嗣はあたしを抱きかかえると胸とかを揉むのをやめようとしない。

 もう。せっかちなんだから。

 コンコン。

 ドアにノックがしてあたしは真嗣から飛び離れた。

「コーヒーが入ったわよ。いらっしゃい」

「はーい」

 ママが顔をのぞかせる。

「だめよお。いくら二人になりたいからって変なことしてちゃ」

「マッ、ママ!」

「…」

 真嗣も真っ赤になってるんだもの、バレバレじゃないのよ。

 結局、リビングに戻ってコーヒーを飲んでいたら、おばさまから電話が来て真嗣は呼び戻されちゃった。

 真嗣はなんだか残念そうな顔してたけど、しょうがないじゃないの。

 

***

 

 翌朝、あたしはいつも通り真嗣を起こしに行った。

「おはようございまーす」

「おはよう、明日香ちゃん」

 おばさまがキッチンから顔を見せる。

「ごめんなさいね。ゆうべ真嗣がごちそうになっちゃって」

「あ、いいんです。あたしももらってるし」

 真嗣の部屋に向かう。

「真嗣?起きてる?」

 やれやれ。相変わらず寝起きは悪いわね。

 部屋に入ると、真嗣は毛布をかぶっていた。

「ほら、起きてよ、真嗣」

「ああ、明日香か」

「なによ、その言い方?しょうがないじゃない、ゆうべは」

「別に明日香は僕といても楽しくないんだろ」

「なにいじけてるのよ。そんなことあるはずないでしょう」

「そう?」

「ほら、機嫌直して」

 あたしは毛布の上から真嗣におおい被さった。

「なにするんだよ?」

「朝のごあいさつ。それともしたくない?」

 しばらく毛布をかぶってた真嗣だったけど、毛布から顔を出すとこう言った。

「明日香の見せてくれなくちゃいやだ」

 もう!朝から何言ってるのよ?!

「本気なの?」

 真嗣はあたしをじっと見つめる。

 あたしはため息をついた。

 それからどうしたかって?

 見せてあげたわよ。ちゃんと。

 どこをなんて聞かないでよね。

 

***

 

 学校に着くと、あちこちで女の子たちがチョコを持ってうろうろしていた。

 あたしはとりあえず光につきあって、一緒に鈴原のところへ行った。

「鈴原、ちょっと」

「ん?なんや?惣流。ワイになんぞ用か?」

「用があるから声かけてんの。ちょっと来てよ」

 あたしたちは廊下のすみっこに移動した。

「で?用ってなんや?」

 あたしは光を押し出した。

「光がね、あんたに渡したいものがあるんだって」

「イインチョが?なんや?」

 でも光はあたしの後ろに隠れようとする。

「ちょっと、光。しっかりしなさいよ」

「だって…」

「ほら。しっかり」

「すっ、鈴原。こ、これ…」

 光は勇気を総動員して鈴原に赤い包みを差し出した。

「ん?なんやこれ?」

「あの…。チョコレート」

「チョコレート?悪いな。ワイは甘いものが苦手なんや」

「そっ、そうなんだ…」

 光はべそをかきそうになってる。

「ちょっと!鈴原!光がどういう気持ちでこれを作ったかわかってるの?」

「なんや?なんでおまえが怒るんや?惣流」

「これが怒らずにいられるもんですか!今日が何の日だか知ってるの?」

「ん?知らん」

 このバカ!

「今日はね、バレンタインデーなの!そのくらい知ってるでしょ?!」

「ああ、健輔が言うとったな。それがどうしたんや?」

「それじゃ、女の子がチョコレートを送ることの意味は?!」

「あ…」

 ようやく鈴原もその意味に気付いたようね。

「もらってやりなさいよ。もし光のことが嫌いじゃないんなら」

「イ、イインチョ?わいなんかでいいんか?」

「鈴原…」

「いや。前に好きや言われたときも、てっきりからかわれてるんかと思うて」

「鈴原」

「ありがたく、もろうとく。あ、ありがとな、イインチョ」

「よかったわね、光」

「う、うん」

「じゃ、あたしは先に戻るから。あとは一人でできるでしょ?」

「あ、明日香ぁ」

「だーめ。あたしだって真嗣にチョコ渡さなくちゃいけないもん」

 そう言うと二人を残してあたしは教室に向かった。

 これでうまくいくわよね、あの二人。

 

***

 

 教室にもどったあたしは真嗣の姿を探した。

 おかしいわね。

 ちゃんと来てるはずなのに。

「ねえ、真嗣は?」

 そこにいた相田に聞いてみる。

「え?さっきまでいたけど。トイレかな?それより惣流。やっぱり真嗣にチョコを渡すのか?」

「あんたに関係ないでしょう」

「そうなんだな。くそー!俺にはだれもくれないっていうのにい!」

 これは鈴原がチョコ光からもらったことは黙ってたほうがいいかもね。

 あたしは真嗣を探して教室を出た。

 ちょうど廊下をやってくる真嗣を見つけた。

「真嗣!」

「あ、なに?明日香」

 まったくもう。嬉しそうな顔しちゃって。あんなことで機嫌が直るんだもの、男の子って単純。

「はい、これ。チョコレート」

「あ、ありがと。ん?これ手作り?」

「そうよ。感謝しなさい」

「う、うん」

「しんじ〜!」

 いきなり後ろから声をかけられて、あたしはびくっとなった。

「それはチョコレートなんだな?そうなんだな?」

 振り返ると、相田が目を座らせて立っていた。

「そ、そうだけど」

「俺にもよこせー!」

 いきなり相田は真嗣に飛びかかった。

「ちょっと、健輔。やめろよ」

「うるさい!うるさい!お前ばかりいい思いしやがってえ!」

 相田は真嗣に渡したチョコを奪い取ろうとする。

「なっ、なにするんだよ?!」

「俺にもよこせー!」

「相田!やめなさいよ!」

 もみあっているうちに、チョコが真嗣の手を離れて廊下の床に落ちてしまった。

 ぱきんっていやな音が響く。

「あ?!」

「やった…」

 あたしと真嗣は相田を睨み付けた。

「「けんすけ〜!」」

「ごっ、ごめんよお!」

「「問答無用!」」

 成敗された相田は、その日は復活してこなかった

 

***

 

 帰り道、真嗣とあたしは並んで歩いていた。

 真嗣がカバンからあたしのチョコを取り出す。

「どうするの?」

「ん。やっぱり気になるから」

 真嗣はその場で包みを開けようとする。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。せめて家に帰ってから」

「いいじゃないか」

「じゃ、そこの公園にいきましょう?」

 公園のベンチであたしと真嗣はため息をついていた。

 なぜって、チョコがみごとにまっぷたつに割れてしまっていたんだもの。

「あーあ。せっかくうまくできたと思ったのに」

 真嗣は片方のかけらをつまむと口に運んだ。

「でも、おいしいよ。このチョコレート」

「そ、そう?」

「うん。それに食べちゃえばいっしょだもの」

「んもう」

 それから真嗣はあたしの耳に口を寄せるとこう言ったの。

「でも、明日香のほうがもっとおいしいよ」

 

***

 

 そんなこんなで大騒ぎだったのよね。

 今年はそんなことはないように、相田を押さえておかなくちゃ。

 あたしはくすっと笑うとチョコを箱に詰め始めた。

 明日は、朝一番で真嗣にチョコを渡すの。

 なんたって今年は、相田以上のおじゃま虫の澪がいるものね。

 なんだか年々障害が増えるような気がするわ。

 でも、あたしと真嗣のつながりはもっと強くなってるもの。

 絶対誰にも負けないわよ。


  おしまい



  ということで、明日香ちゃんのバレンタインの思い出でした。
  しかし、一年前のシンちゃんって・・・(^ ^;
  若さ故、ってやつですかねえ。
  ではまた、本編で。


どもどもこんばんわー。ぼく、ドラえぽんです。

ZUMIさん、可愛い明日香ちゃんありがとうございますー。\(●> _ <●)/もうしんぼうたまらん

ってぐおおおう。ほごえい、ごろごろごろごろごろごろ 明日香ちゃんイカす!\( ^ 0 ^ )

それにしても、シンちゃんお猿化してますねー。(笑) でも、相手が明日香ちゃんじゃあしょうがないよね。( ^ - ^ )

お邪魔が入っていじける真嗣くん、それを包み込む明日香ちゃん。うーん、母性を感じるなー。しかし、何を見さしてもらったんじゃい真嗣くん!\(●> _ <●)うらやましい

健輔の暴走も笑えました。おいおい、それはないだろう。(笑)

最後の二人の会話もごろごろでした。シンちゃんかっこいー

さあ、素晴らしい作品を書いてくれたZUMIさんに今の気持ちを伝えるのだー。\( ^ 0 ^ )そうだー

 

ZUMIさんへの感想はここです。

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このお話の本編「明日香−REGENERATION− 2」はここにあります。アスカにんには辛抱たまらんほど可愛いアスカ様がいますよ。行かなきゃ

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ここから是非感想を送るのだー。\(●> _ <●)おーっ

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