時は4月も終盤。読者の皆さんにはもうすっかりお馴染みのコンフォートマンションの一室。ちょっとした「事件」は、いつものようにそのマンションの一室から始まった。
「シンちゃ〜ん、アスカ〜。」
この部屋の持ち主、即ちミサトが同居人の2人を呼ぶ声がした。
「「何(ですか)?」」
見事に同じタイミングで2方向から現れた2人。
「あのね、私、明後日から加持と旅行に行ってくるのよ。んで、2人に留守番頼みたいんだけど。」
LASなG.W.LASなゴールデンウィーク 作:ゆにゃゆにゃ
思わず顔を見合わせるシンジとアスカ。
「それで、何日くらいなんですか?」
「えーっと…。」
ミサトは指を折って日数を数える。
「10日間ね、5月8日の日曜日には帰ってくるわ。」
「10日間も?加持さんとどこに行くのよ?」
「ちょっとオーストラリアで骨休めよ♪」
「骨休め…って最近はネルフも暇そうだから、十分休んでるように見えるけど。」
「う。ア、アスカってば痛いところを突くわね…。」
「まぁいいわ。ゆっくりしてらっしゃいよ。」
「あら?あなた達保護者が10日間もいて困らないの?」
真顔で尋ねるミサト。ミサトのいない10日間をシミュレートするシンジとアスカ。
(ミサトさんがいない10日間…。ビールの買い置きが要らないし、おつまみの用意も要らないから家計が助かるな…。)
(ミサトが居ない。=シンジとこの部屋で二人っきり…!?=ふふふふ…。)
「「気にせずに行ってきなさいよ(きてくださいよ)。」」
見事なユニゾンで答える2人。
「そ、そう?それなら遠慮無く行かせてもらうけど…アスカ…あんた、何ニヤニヤしてるのよ?」
「えっ!?ア、アタシのどこがニヤニヤしてるっていうのよ!変な事言ってるんじゃないわよ!」
「まぁ、いいわ。それじゃ、お土産買ってくるからねん♪」
そう言って、嬉しそうに加持に電話を始めるミサト。その横では1人妄想街道驀進中なアスカが、ニヤニヤしたかと思えば顔を赤くしたり、1人で床を転がったりと危険な状態だったという。
そして翌々日…。
「それじゃ、行ってくるわね。2人とも留守番頼んだわよ。」
「「行ってらっしゃ〜い!!」」
2人はそれぞれの思惑を胸に満面の笑顔でミサトを見送る。そして圧縮空気の音を立てて閉まるドア。
(さぁシンジ、邪魔物はいなくなったし…)
ドアに背を向けてリビングに戻ろうとするシンジに飛びつこうとするアスカ。と、再びドアが開いて、ミサトが顔を出した。
「アスカ。私がいないからって、シンちゃんにヘンな事しちゃダメよ!」
シンジに飛びつこうとする態勢にあったアスカはその場にひっくり返り、もう一方の当事者のシンジは…
(ア、ア、ア、アスカが…ヘ、ヘ、ヘ、ヘ、ヘンな事を…!?あぁぁ…考えちゃダメだ、考えちゃダメだ、考えちゃダメだ…。)
とその場に硬直していた。そんな2人の様子を満足げに見届けたミサトは今度こそ出発していった。
「さてと…。」
辺りを見回すシンジ。そこへミサトが本当にマンションを出ていったかどうかを見届けたアスカが戻ってきた。
「ねぇ〜シンジぃ〜♪ミサト行っちゃったよ〜?」
この上も無く甘い声でシンジに擦り寄るアスカ。シンジもアスカの方を向き直る。
「そうだね、そろそろ本当に行かないと飛行機に間に合わなくなっちゃうからね。それじゃあ…。」
「うん♪それじゃあ?」
「まずは溜まった洗濯物の片付けからスタート!」
「おーっ!(^o^)/…って何でそうなるのよ!!(--# 」
「だって、折角ミサトさんが居ないんだもの。今がチャンスじゃないか。」
「分ったわよ、もう…。でも、洗濯が終ったら…ね?」
「そうだね。その次は布団干して、掃除して…。」
「ちょっと!他には無いの!?」
「う〜ん…その程度かな?」
「もう!知らない!!」
アスカはドタドタと足音を立てて自分の部屋に戻るとドアを閉めてしまった。
(シンジのバカ、シンジのバカ、シンジのバカ…。ミサトがいない時くらい、アタシの事構ってよ…!)
しばらくの間、不機嫌そうにベッドに伏していたアスカだったが、時間が経つに連れてシンジの事が気になり始めた。
(シンジ…何やってるんだろう?掃除かな?やっぱりたまには手伝ってあげないと悪いかな?でもアタシから謝るのもなんだか、ね。いいわ、とりあえずシンジの様子だけでも覗いてみよーっと。)
ドアを僅かに開けて、その隙間からリビングの様子を窺うアスカ。そこには洗濯物を干し終え、掃除を始めていたはずのシンジが背中を丸めて座り込んでいる。
「シンジ!!」
慌てて駆け寄るアスカ。
「シンジ!大丈夫!?」
シンジの元に駆けつけたアスカがシンジの顔を覗き込む。
「…え?何が???」
きょとんとした顔のシンジ。
「だって、アンタ今、苦しそうに背中曲げてたから…。」
「い、いや、別に苦しかった訳じゃないんだけど…ほら、これを見てたんだ。」
そう言ってシンジが指差したものはアルバムだった。
「アルバム…?何か面白い写真でも有ったの?」
一安心したアスカもシンジの側に座り込んで、アルバムを覗き込んだ。
「って何よ!これは!!アタシとアンタが一緒に写ってるのばっかじゃない!アンタこういうのコレクションしてた訳!?」
顔を真っ赤にしながらも、一応は抗議するアスカ。
「ち、違うよアスカ。僕もこんな写真初めて見るんだよ!」
「え?そ、それじゃあ…。」
「うん。多分ミサトさんとか加地さんとかが僕らの気付かないうちに撮ってくれてたんだと思うよ。」
「あ、ほらほら、これ見て!シンジ。」
アスカはそう言って1枚の写真を指差す。その写真には不機嫌そうなアスカと顔に赤い手形を張り付かせたシンジが写っていた。
「これ、何の時だったか覚えてる?」
「えーっと、これは…あぁ、思い出したよ。確かアスカが朝、お風呂に入ろうとしたら温度が熱かったって怒ってリビングに来たら…。」
「アタシが巻いてたバスタオルがシンジの目の前で落ちて、その時にシンジの顔が真っ赤になっちゃって…。」
「それでアスカが『きゃーっ!変態!バカーっ!!』って叫んで僕の顔を引っ叩いたんだよ。」
「…今になって考えると、シンジって何も悪い事してないんだよね。ごめんね、シンジ。痛かったでしょ?」
「う〜ん、もう忘れちゃったよ。あ、ほら。それよりこれっていつだったか覚えてる?」
「どれどれ?」
シンジが示した写真には、両手一杯の荷物を抱えてマンションの玄関を入ろうとしているシンジと、その先を歩くアスカの姿だった。
「これはね…アタシがシンジのこと、初めて買い物に誘った日でしょ?違う?」
「そうだよ、アスカ。覚えててくれたんだ。」
「あったりまえでしょ。今でもあの時は荷物持たせるだけ持たせて悪かったな〜、って思ってるんだから。」
「えーっ、本当に?だったらどうして今でも買い物の時に僕だけ荷物持たせるのさ?」
「アハっ、ゴメンね。シンジ。側にいるとどうしても甘えたくなっちゃうのよ。」
「本当かなぁ〜?」
「本当よ、信じてくれないんだったら…。」
そう言って突然にシンジの肩に体重を預けるアスカ。
「ほら。こんな風に甘えたくなるの。分った?」
「うん。よく分ったよ、アスカ。」
そう言ってシンジはそっとアスカの肩に手を回す。
(うっわー!シンジも変わったわね♪前だったら絶対逃げるようにして離れてたのに、今やアタシの肩に手を回すなんて!)
嬉しくなったアスカは、さらにシンジに寄り掛かりながらアルバムのページを繰っていった。
しばらく後。その場に有ったアルバムを全てみ終わった2人。
「結構たくさん有ったわね。」
「そうだね。いつのまにあんなに写真ばっかり撮ってたんだろうね?」
アスカは正座した姿勢のまま、前に倒れ込むようにして両手を床の上に伸ばす。
「んっ…んーっ…と。」
猫の様な背伸びをしたアスカは立ち上がると壁の時計を確認した。
「あっ、もうこんな時間よ。シンジ、夕ゴハンどうする?」
「え?あぁ!ごめん、アスカ!何にもまだ準備できてないんだ!買い物行って、すぐ支度するから待っててくれないかな?」
「イヤ。」
「そんな〜。じゃあどうしろって…。」
困ったシンジの顔の前に、アスカは1枚のカードを突き出した。
「シンジ、これな〜んだ?」
「え?カード…だよね?」
「そう。クレジットカードよ。ミサトがね、留守中に、これだけだったら使い切ってもいいから、ってアタシに預けたの♪」
「でも、初日から使っちゃっていいのかなぁ…。」
「だーいじょうぶだって!ミサトが骨休めするんだったら、アタシ達だって骨休めよ。ね?」
そう言って、シンジを上目遣いで覗き込むアスカ。
「そうだね。それじゃ、今夜は外食にしようか。」
「そう来なくっちゃ!」
「ただし…。」
「??」
「まだ1日目で、これから先どんな事にお金使うか分らないんだから、いきなり高級レストランってのは無しだからね?」
「ふふっ、分ってるわよ、そんな事。先月、中学の下にファミリーレストランが出来たじゃない?あそこに行ってみない?」
「そうだね、あそこなら歩いて行ける所だし。」
「じゃあ、決まりね。ちょっと待ってて、支度してくるから!!」
そう言うとアスカは小走りで自分の部屋に戻り、シンジも服を着替えるために自分の部屋に入っていった。
数分後、ほとんど同時にそれぞれの部屋から出てくる2人。
「え?」
「うそ。」
アスカの服装はクリームイエローのポロシャツにジーンズ。そしてシンジもクリームイエローのポロシャツにジーンズ。つまり、2人ともまるで同じ服装だったのだ。
「ちょっと、今時、こんなの恥ずかしいわよ!昔有った《ペアルック》とか言う格好そのまんまじゃない!」
「ご、ごめん。まさかアスカが同じ格好してくるなんて思っても無かったから…。ちょっと待ってて、着替えてくるよ。」
部屋に再び入ろうとするシンジの腕をアスカが掴む。
「もういいわよ。時間無いんだし…さ。このまま行っちゃお、ね?」
「いいの?アスカ。」
アスカは黙ったままコクコクと頷き、2人はマンションを後にした。
数時間後、レストランからの帰り道にシンジの電話が鳴った。
《はい、碇です。…あぁ、ミサトさんですか。…えぇ、今着いたんですね?そんな、わざわざ報告してこなくても。子供じゃないんですから。》
「ミサトさん、向こうのホテルに今着いたんだって。」
そう言って、微笑みをアスカに向けるシンジ。アスカはニヤリと笑みを浮かべるとシンジから電話をひったくった。
《ミサト!お酒飲んだ時は特に寝相が悪いんだから、加持さんに大怪我させないようにね!!》
アスカは一息にそう言うと電話を切って舌をペロッと出した。
「ミサトがさっき、変な事言ったから仕返しよ♪」
「そう…なのかな?」
シンジは苦笑した。
「でも、オーストラリアか…。いいなぁ〜、ミサト。」
「アスカも行きたかった?」
「ううん。アタシは別にいいわ。」
アスカは屈託の無い表情で首を横に振り、ちょうどその時、2人が住むマンションへ帰り着いた。玄関のIDカードを照合して、ロックを解除して中に入るシンジとアスカ。2人が中に入ると、わずかな金属音とともに再びロックが掛けられた。
「うん。そう、アタシは別にいいのよ。」
「アスカ?」
「アタシがこんな事言うなんて珍しい、とでも思ってるんでしょ?」
「う、うん。」
「あ〜、ひっど〜い。本当にそんな事思ってたの〜?そんな事を言うのはこの口かな〜?」
そう言ってシンジの唇を指先で引っ張るアスカ。もちろん力は加減して、あくまでもシンジに痛い思いをさせることはないのだが。
「あひゅは、ほへん、ほへんっへは。ほうはらひへよ。(アスカ、ごめん、ごめんってば。もう離してよ。)」
「解ればよろしい。…でもね、さっき言ったのは本当よ。そりゃあオーストラリアで10日間も遊んでくるっていうのは羨ましいんだけど…、別に加持さんとずっと一緒にいるってことが羨ましい訳じゃないのよ。」
「…うん。」
「あんまり、意味が分らないって顔してるわね?いい?シンジ。女の子が一番幸せなのはね…。」
そう言って、シンジの鼻先に自分の人差し指をくっつけるアスカ。
「女の子が一番幸せなのは、自分の大好きな人と一緒にいる時なのよ。だから、今、この瞬間のミサトとアタシはきっと同じだけ幸せなの♪」
アスカはそう言うと、シンジの腕にギュッとしがみついた。
「そうだね、僕もそう思うよ。男だって自分の事を一番解ってくれる、自分が一番好きな人が側にいてくれる時が、きっと一番幸せな時だもの。」
シンジのその言葉を優し気な瞳のまま聞いていたアスカだったが、ふと思い出した様に言葉を切り出した。
「ごめん、シンジ。アタシさっきの言葉、ちょっと訂正するわ。」
「え?どうして?」
「ミサトとアタシが同じだけ幸せ、っていうのは違ってたかもね。」
「……………???」
「アタシの方がきっと幸せ!!」
そう言って突然、シンジの首に抱きつくアスカ。
「う〜ん、でもどうして?」
「へへっ、それはね〜。」
「うん、それは?」
「アタシの相手が、シンジだからよっ♪」
後日、大量のおみやげとともに帰国したミサトが見たのは、以前に比べてますます仲の良くなった2人の姿だったという。家にいれば、その姿を見せ付けられるため、加持の所に転がり込む事が増えたミサトが、結局そのまま加持とゴールインしたというのは、また別のお話…。
LASなG.W. 完 作:ゆにゃゆにゃ
〜後書きもどき〜
こんにちは、ゆにゃゆにゃです。久しぶりに「LASな〜」シリーズを書いてみました。
世の中ゴールデンウィークで盛り上がっているので、今回のお題もそのままいただいてしまいましたが、いかがだったでしょうか?
世の中が平和になり、ネルフの仕事も減って大型連休が取れるようになったミサトや加持。その休みを利用しての海外旅行、羨ましいですね〜(^^)
しかし、その留守番のおかげで2人でのんびりと過ごす事になったシンジ&アスカ。これまた羨ましい限りです(^^)
ちなみに、ミサトが旅行に行っている間、上機嫌なアスカがエサをサービスしすぎたために、ペンペンはすっかり太ってしまったそうです(^^;
ここまでお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
ゆにゃゆにゃでした。
あははは、妄想アスカ様可愛いッス。\(●> _ <●)いえい というわけでゆにゃゆにゃさん、らぶりーアスカ様4人目ありがとうございますー。\( ^ 0 ^ )/いつもありがとー それにしても、なんと10日間も二人ッきりでお留守番。これはアスカ様じゃなくても妄想がひろがりますなあ...。(●^▽^●)うへへへ<ヲイ ミサトさんってば出発前に良いフリするなあ。(笑) でもせっかくのフリもシンジ君にかかっちゃあ意味ナシか。( ^_^;)掃除ってオイ ミサト達の取ったアルバムのおかげで甘い一時が。よかったよかった。(●^_^●) そしてペアルック!いや、やっぱコレが無いとね。\( > 0 < )ばんばんばん(←床タタイテル) ラストシーンもうまいッスねえ。そう、アスカ様はシンジ君と居るのが幸せなんだよねえ。( ^ _ ^ )ほえほえー さあ、またもやごろごろなシリーズ4作目を書いてくれたゆにゃゆにゃさんに、アナタのゴロゴロ度をつたえてもっと転がしてもらおー。\( ^ 0 ^ )ごろごろー |
ゆにゃゆにゃさんへの感想はここです。
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◎感想用フォームです。2,3行の感想でも作者さんは嬉しかったりするのだ。