Over the Rainbow
♪ ♪ ♪ ♪
「虹って、好き?
あたしはね、好きだよ。
だってさ、雨の上がった後の虹って、綺麗じゃない?
ずっと雨でつまんなかったのを我慢してたご褒美みたいであたしは好き。
大体さ・・・あんたと最初に出会ったのがOver the Rainbowだったでしょ?なんか偶然とは思えないのよね。
あの空母がなかったらひょっとしたらあたしたちは会うこともなく別々の生活で人生終えてたかもしれないでしょ?
最初に一緒にシンクロしたのもそこだったし、あのときはいい迷惑だとか思ったけどいまではあの使徒には感謝ね。
ねえシンジぃ、あたしと会って、良かったって、思う?」
なんてことをあたしは横で幸せそうな寝顔をしているシンジに言ってみたりしている。
もう、男なのにこの顔は反則ね。
女のあたしの立場がないわよ。
そっか・・・このシンジと会ってからもうすぐで1年経つのよね・・・
使徒はいなくなったけど、あたしたちが心に持ってる傷は決して浅いものでもすぐに直るものでもなかった。
あたしなんか今の自分が信じられないくらいなんだから。
でも・・・そこにいてくれたのはこのシンジ。
いがみあってばかりだったけど、けんかもしたけど、それでもいつも側にいてくれたんだから。
こいつもね・・・今だから言えることかもしれないけどさ、大変だったみたいだし・・・
なんだったっけ、たしか・・・渚カヲルとか言う使徒を殺したことでこいつ自身むちゃくちゃ悩んでたんだって。そんなことも知らずにあたしは言いたい放題言ってたけど。
でもね、はっきり言って今でもこいつ、情けないのよ。
ぼけぼけしてるから見てないと何か変な事始そうだし、どっか行っちゃいそうだしね・・・
今でもね、朝起きて、今までのことが全部夢だったんじゃないかって、シンジと出会った日々は幻だったんじゃないかって、そんなふうに思うことあるんだよ?
なんか・・・笑っちゃうよね?
ううん、あたしがシンジと出会ったことをじゃないのよ。
そんなふうに考えて、とっても大切に想ってるあんたのことを昔は毛嫌いしてたのかな・・・って思ったらね。
「ん・・・あ、あれ、アスカ?
おはよう」
シンジが起きたみたい。
「おはようじゃないでしょ?
もう、いったいあんた今が何時だと思ってんの?」
そう言ったらこいつったらあたしの肩抱いてもう一回寝る体制に入った。
「あ、こら、シンジ!
二度寝なんかするんじゃないの!
言ったでしょ?雨が上がったら一緒に散歩に行こうって」
「うん、そううだったっけ・・・
でも、もうちょっと・・・昨日も夜遅かったんだから・・・」
「もう、だから言ったのに・・・」
って、昨日もこいつは勉強が分からないって言うからあたしが教えてやってたの。
あたしはさ、朝ゆっくりでも良いからいつまででも教えていてあげても良いんだけど、シンジはそうはいかないじゃない?
まあ・・・半分はあたしが原因作ってるんだけど。
「うん、大丈夫。
じゃあ、行こうか?」
シンジがひとつのびをするとあたしに右手を差し出した。
「うん」
当然のようにその手を取るあたしが、ここにいる。
てくてくてくてく
「ねえ、シンジ」
散歩って言っても、ホントに散歩。
近くの公園に行くだけ。
雨上がりの葉っぱがきらきら宝石みたいに輝いている。
「なに、アスカ?」
シンジがつないだままの手に視線を送りながら言った。
「さっき、寝てたでしょう?」
「うん」
「何か、夢、見た?」
そう・・・夢。
かつて・・・あたしが一番苦しんだもの。
あたしが・・・一番見たくなかったものを容赦なく見せつけたもの。
「夢、ねえ・・・」
シンジはちょっと考えてから答えた。
「あんまり、覚えてないや」
「そう」
ちょっとだけ安心。
覚えてないのなら、たいしたことはないと思うし。
そりゃあ、人間は一日に平均1.5時間夢を見るって言う研究もあるけどね。
「夢・・・かあ・・・」
シンジはあさっての方向を見ながら言った。
雲間から差し込む陽の光が気持ち良い。
「え?どうかした?」
「ううん。
ただ・・・ね、EVAに乗ってたころの僕には夢だなんて、考えもしなかったなあって、そんなふうに思ってね」
シンジの顔は、ちょっとだけ寂しそう。
どことなく、あのころのシンジの表情を重ねてしまう。・・・そんなあたしもあたしだって解かってはいるんだけど。
「でも、今はそのことに気づいているんでしょ?
だったら問題ないじゃない」
あたしはシンジに、それにもまして自分に言い聞かせるつもりで言った。
きっと・・・心の中であたしはあたしのことを笑ってるんだと思う。
どうしてそんな偉そうなこと言ってるの?って。
ホントは、そんなコトバで取り繕う必要なんてどこにもないのにね。
おかしなものよね、人間って。
公園は、雨が上がったばかりであたしたちだけのために、そこにあった。
東屋の腰掛に座って、ただのんびり時間を楽しむ。
時間を楽しむっていう発想がうまれたのは・・・いつのことだったかしら?
ただただ時間に追われて、勉強して、EVAのことばかり考えて、それだけに毎日が終わってたころには考えられなかったことなのにね。
これも成長かしら?
うん、きっとそうよね。
このあたしがそう思うんだから、きっとそうなのよ。
「ねえ、シンジ」
「なに、アスカ?」
あたしの手は自然とシンジのそれに重なった。あたたかくて、あったかい手。
シンジもそれに抵抗をしようとはしなかった。ただ、そっと握り返してくれた。
「あたしたちが出会ってから・・・もうすぐ一年経つのよね?」
シンジは微笑み返した。
「うん、そうだよ」
「・・・アニバーサリーにしようか。二人だけの」
「記念日?」
「そう」
二人だけの、記念日。
あたしたちという、何も関係がなかったはずのふたりが運命のめぐり合わせで出会えた日。
最初、あたしにとっては仮にそれを記念日とするならば“負の”記念日だった。
決して良い思い出ではなく、どちらかといえばこんなこともあった、で記憶のどこか片隅にでも封印したかったもの。
「記念日、かあ・・・
良いね、そういうのって」
「でしょう?」
あたしはシンジの肩に自分の頭を乗せた。
もうとっくに追い越されてしまった身長。
でも、それも今ではちょっとだけ嬉しいこと。
あんまり男より女の方が背が高いのも・・・ね?そんな些細なことなんだけど。
「アスカ・・・」
「何?」
「あのね、幸せって、なんだろう?」
「幸せ?」
「うん」
あたしには答えが見つからなかった。
そのままの空白の時間が流れる。
「僕はね」
突然シンジは言った。
「きっと、今が幸せなんだって、思うんだ」
シンジはあたしの方を向いた。ああ・・・きっと、これが幸せそうな顔、なのよね?
「ずっと、僕たちって目の前のことしか考えてこなかったよね?
それはそれで、大切なことだったんだって、思うだけのゆとりが感じられるから。
今あるこの想い、それがきっと世界で一番大切なものを守りきれた充実感だって、思えるから。
だから・・・僕は幸せなんだって、そう思うよ」
「うん・・・あたしもそう思う」
心から
そう、信じる。
あたしは、シンジの方を見ると、そっと目を閉じた。
シンジは笑って、優しくキスしてくれた。
帰り道。
ふっと見たら、そこには虹がかかっていた。
「ねえ、アスカ」
「ん?」
あたしは左手をシンジの右腕に絡めながら返事をした。
「虹の橋のかかるさきにはね、宝物が埋まってるんだって」
「うん」
「でも僕は思うんだ。
きっとその宝物の名前は“希望”って言うんだって」
希望・・・
現実に負けないための、
そして幸せをつかめるという、希望。
幸せをカタチにしたら・・・きっと今のあたしたちになるって、あたしは考えた。
あとがき
そんなに文量かいてないのにあとがき書いてる悪者です。てらだたかしと申します。
何が書きたかったのか解かりませんが、とにかく書いてしまいました。きっと雨の中図書館に行っていたからでしょう。
では、“次”があればその機会にお会いしましょう。
てらだたかし
に、虹いいい!!ぶしゅーーーーー(←血柱)
というわけで、てらだたかしさん素敵な作品をありがとうございますー。(●^▽^●)ぐっとくるぜよ
お、思わず興奮してしまいました。(笑) 虹ってそこはかとなく立ち直ったアスカ様の雰囲気にピッタリだと思いませんか?
哀しい雨の後の、心を知らずに沸き立たせてくれる存在。きっとシンジ君には彼女が虹の様な存在なのではないでしょうか。うーん、虹っていいなあ。( ^ - ^ )
つらかった夢。そんな哀しい雨ももうやんで、虹とともに今の幸せがある。もうこの二人は虹のかかる先にある宝物を見つけましたよね。
幸せな二人の未来に幸あれ。\( ^ - ^ )がんばれよー
さあ、幸せな未来をかいま見せてくれたてらだたかしさんに、今の気持ちを早速伝えるのだー。\( > 0 < )感動ッス
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