「ひげぇえええええ〜!?」
突然の悲鳴が指し示すものをシンジは理解し得なかった。
しかし、大切に思う少女の悲鳴であることだけはわかった。
味噌汁の味を確認した後、焼き加減を見ようとした焼き網とあじの干物を放り出し、アスカの部屋へ走る。
「アスカ、何だ!?どうしたんだ!?」
バンッ!
一点の迷いもなくドアを開け放つ。このときシンジはいとも易々とジェリコの壁を乗り越えていた。
シンジの目に、肩を震わせ魅入られたように鏡をみつめる少女の後姿・・・。
「アスカ!」
はっ!
我に返る少女。
(まずい!こんな、こんな姿だけは見せちゃだめ!!)
アスカは振り向きざまにシンジを突き飛ばし、バスルームへ走った。
ドダダダダ(run)!!
バタン(shut)!
カチャッ(lock)!!
そのまま床にへたり込む。
「なっ何よ、これぇ・・・」
アスカは鼻の下におそるおそる手をやる・・・。
間違いない。それはそこに存在する。
アスカが望もうと望むまいとにかかわらず、それは鼻の下に鎮座ましましていた。
「どうしてひげがあるのよっ・・・。アタシは女よっ・・・。どっから湧いて出たのよっ・・・。」
ふらふらと立ち上がり、再び魅入られたように鏡を見つめる・・・・・・。
ふさふさした栗色のかたまり・・・・・・。
と、それは生き物のように伸び始める。
10センチも伸びただろうか・・・。
伸びが止まった。
「イヤァアアアアアアアアッ!」
精神汚染。
「アタシは子供なんて要らない・・・。エヴァを駆って戦うの・・・。シンクロ率が落ちた・・・。
起動しない・・・。あの女に助けられた・・・。シンジに負けた・・・。シンジ・・・。シンジィ・・・。」
涙が頬を伝う。アスカはそのことに気付いてもいない・・・。
崩壊する寸前
ダンダンダン(knock)!
アスカに突き飛ばされたときにベッドの角で頭をしたたかに打ち、瞬時、お花畑を見たシンジが再起動した。
「アスカ!どうしたんだよ!」
「イヤッ!イヤァアアアアアアッ!!」
ドゲシッ!ガチャン!バンッ!ドンガラガッチャーン!バキドカボキグシャ!
アスカは暴走する。
「アスカ!アスカッ!!」
シンジはドアに体当たりをする。
一度!
二度!
バキッ!!
シンジの目の前に、蒼白のアスカ。
手当たり次第に投げ、蹴り、引き裂く。
(逃げちゃだめだ!けがをする前に止めなくちゃ!)
かけ寄り、後ろから力一杯抱きしめる。
シンジの手を振り解こうと、暴れるアスカ。
肘がシンジのわき腹に食い込む。
ヘッドがシンジの顔面に炸裂する。
痛みに耐え、更に腕に力を込めるシンジ。
アスカは力尽きた。
シンジの腕の中で脱力する。
その場に崩れ落ちようとするアスカに、シンジは抱きしめたまま優しく話しかける。
「アスカ?どうしたんだよ」
「・・・・・・」
「何があったんだい?言ってごらんよ」
「・・・・・・」
「言えないの・・・?」
「・・・・・・」
いつものボケボケッとしたシンジではない。確かに、他人の顔色をうかがういつもの彼ではなかった。
「僕じゃだめなの!?僕はアスカの力になれないの!?」
「チ・・・ガ・・・ウ・・・」
「・・・アスカ?」
「ちがう、違うの!」
アスカの口から嗚咽が漏れる。そして・・・
「アタシを見ないで・・・」
「・・・・・・・アスカ?何があったのかわからないけど、話してみてよ。僕じゃだめなんだろうけど、僕はアスカの力になりたいんだ・・・。アスカを護りたいんだ!」
こんなアタシでも・・・?
蒼い瞳から涙があふれる。
「シンジ、シンジィ〜!!!」
アスカは素早く振り返り、シンジの胸にしがみつく。
シンジは力をこめてアスカを抱きしめる。
シンジのシャツにアスカの涙がしみ込んでゆく。
「アタシを護ってくれる?」
「うん。絶対に。」
「でも、今のアタシを見たら、シンジは・・・」
シンジは決然と叫ぶ。
「そんなことないよ!今わかったんだ。僕はアスカのこと・・・」
突然アスカは立ち上がり、キッチンへと走る!
わけがわからないながらもシンジはアスカの後を追う!
アスカはキッチンの中をきょろきょろと見まわす。
そろりそろりとある物に近づく・・・。
あじの干物・・・?
フニャア〜 ゴロゴロ・・・・・
シンジの後ろ頭に大きな汗が浮かぶ・・・
ここはNERV技術部。主任のリツコは、彼女と同じく徹夜の残業をしていたミサトと朝のコーヒーをすすっていた。
「ミサト、最近あの子達はどう?」
「見ててもどかしいわ。お互いに好きなのに、甲斐性なしと強情が考えすぎたり意地になってんだもんね。さっさと思いきればいいのに。」
「でも、そのおかげでミサトは楽しいんでしょう?上手くいってごらんなさい、アスカの性格からして、シンジ君にべったりになるだろうから、あの家にミサトの居場所はなくなるわよ。」
「・・・!」
そんなことを考えてもみなかったミサトの後ろ頭にも大粒の汗が浮かぶ・・・。まさに「月に代わって(以下自主規制)」状態である・・・。
「そういえば、昨日のシンクロテストのあと、アスカが頭が痛いと言ってね・・・やだ!こんなもの渡してしまったわ!」
ミサトはリツコの手元を覗き込む。ある動物好きのリツコが手にしている、薬のパッケージのラベルには・・・
「インスタントネコノモト」
(おしまい)
お初にお目にかかります。miyamoと申します。
すんませんすんません。ひっぱった割にはしょうもなかったです。ネタ(最後の一単語)はフレドリック・ブラウンの短編です。
シンジ君、言えなかった言葉をそのうち言ってあげるんだよ〜。アスカちゃん、いつ人間に戻るのかな・・・?
ではでは。
どもども、こんばんわ。ぼく、ドラえぽんです。
miyamoさん、初投稿ありがとうございますー。\( > 0 < )ひげ〜い
いやー、良い話だ。( > _ <
)くーっ
暴走したアスカ様をシンジ君が止めるとこなんてたまんないッスねー。蹴られても頭突きされてもあなたの為なら、って感じッスか〜?
んー、良いですねー。
後、あじの干物のとこおもろいッスねー。せっかくのシンジ君の告白シーンなのに、あじの干物ってアスカ様...。(笑) でも、面白いからアリだな。(爆)
しかしリツコさん、インスタントネコノモトなんて何で持ってるんだろ。まあ、マッドだからな。(笑)
ちなみに、フレドリック・ブラウンとは短編SF作家さんだそうです。みんな、読んでみましょう。ドラえぽんも探してみよっと。
さあ、にゃんにゃんアスカ様を書いてくれたmiyamoさんに感想を書こー。\( ^0^ )おーっ
miyamoさんへの感想はここです。