かすいpresents.
〜優しすぎるあなたに〜
After The Wind
プロローグ
赤く染まる空。
鮮やかなまでの夕陽。
風。
もし、何も知らずにこの街を訪れる者がいるのなら、誰もがかつて使徒と呼ばれた化け物が襲ってきていたなどと、信じることはしないだろう。
そして、今尚、その脅威が運びっているなど。
第三新東京市。
それが、街の名だった。
「戻ってきたんだね、この街に。シンジ兄ぃ(にい)?」
少女は、穏やかにそよぐ風に舞う前髪を軽く払うと、自分の傍らに立つ頭ひとつ分だけ高い少年を見上げ、呟く。
この高さまで来ると、風が僅かに強いのかもしれない。
「嬉しいかい、レイ?」
蒼い髪をくしゃくしゃっ、となでた。
自然に微笑を浮かべる。
レイの想いが理解出来るだけに、素直に気持ちが表に出たのだろう。
その瞳は優しかった。
高台からは、二年前と何も変らぬ景色が広がっている。
確かに僅かな変化はあるのかもしれない。
しかし。
そう思った。
あの時。
もう一人の自分が。
そう、もうひとりのシンジが帰っていった時と、何も変らない。
心に流れる色は、喜びのそれか。それとも、悲しみのそれなのか。
今の自分には知る術も無い。
いや、喜びなのだろう。
こんなにも、心が騒ぐ。
「でも、信じられないよね、お兄ぃ?」
レイ。
「何が?」
「何も起こってないような感じがしない?私、戻ってくる必要、無かったんじゃないの?」
「そうでもない。少なくともこの二年で18体のモドキが出てるし、この半月に現れた奴は取り逃がしたらしい」
シンジは眉を寄せた。
そして、それこそがふたりが戻ってきた理由なのだから。
「加持さん達でも?」
「トウジとケンスケがスーツを着て出たらしいけど、それでも逃がした」
「………スーツってあれでしょう?」
「うん。でも、モドキの方も変化してきているらしい。……いや、進化してきた、の方が正しいかもしれない。………A.T.フィールドを使い始めた」
「だから、私って訳なのね?」
溜め息。
「あぁ」
ふたりから後ろに離れた道で、車が走り、過ぎ去る。
「………それでも」
レイが言った。
「ん?」
「それでも、ここにいれるのは嬉しい」
微笑み。
心からの。
「そう。………そうだね」
微かに呟いた。
シンジは眼を細め、僅かに見える夕陽にその身を溶すように暖かさを一身に受けた。
天を仰ぐ。
雲の合間に星の瞬きが見え始めていた。
太陽も、もうすぐ己の姿を地平に隠す。
「お兄ぃ?」
レイが、シンジの袖をちょい、と引っ張った。
覗き込む。
幼い仕種に、シンジに対する信頼感が散りばめられている。
愛らしさと呼ばれる風に身体を包んでいた。
「うん?」
答える。
「いいの?………アスカに逢いに行かなくって?」
「無理をしなくても、逢う時がくれば自然と逢うさ。アスカにだって今の生活があるんだろうしね。………それに」
「それに?」
「………僕はまだ、シンを超えてはいない」
シンジは苦笑いながら、レイに言った。
額に巻かれた、紫のバンダナを外すと握り締め、視線を落とす。
シン。
少年が残してくれた、何か。
その全てがこのバンダナにある。そう思うことは間違っているのかもしれない。
だが、それすら自分に確かに問い続けている。
見付からない。
わからない。
歯痒かった。
「お兄ぃ……………」
「いつか、そんな日が来るのかな………?」
零れてしまいそうな呟き。
今のシンジの心境そのままなのだろう。声に力が伴わない。
この二年という月日の中で、常に自分に問い掛けていたことだった。
訓練の時も。
食事の時も。
果ては、眠りに就いた夢の中ですらも。
「そんなにシンに拘らなくても良いのに。お兄ぃは、お兄ぃだよ?自分を縛る必要はないと思う」
励ますと、腕にしがみつく。
「レイだって、そうだろう?」
「えっ?」
「シンに縛られているのは。シンの優しさが、強さが、想いが、何処かで僕らを縛っているのかもしれないな?」
「それは、お兄ぃよ。私は違うもの」
にこり。
笑うと、レイはシンジから離れ、両手を広げてくるりとまわった。
「レイ?」
「この街にはシンがいたわ。あそこに見える公園にも、あそこの道にも、あのスーパーにだって。全部にシンがいる。だから、私はこの街が好きよ。いつでもシンに逢えるから。………シンは私を縛ったりしない。私がシンに抱き着いているの」
心に残る記憶。
シンの笑顔が浮かんだ。
妖精が舞う。
確かな喜びだけが、少女に微笑みを。
風がながれる。
それは、シンの風。
木々が揺れる。
それは、シンの奏でる歌。
大切な。
大切な。
あの人。
何と強い娘であることか。
「レイ………」
微かに口元を緩める。
誰よりもその想いを知っているのは、自分だった。
「だから、問題はシンジ兄ぃ、なの。………いいの、ほんとに逢いに行かなくって?」
シンジに近づくと、睨むようにレイは見上げる。
腰に手をあてる、その姿。
誰かに似ているのかもしれない。
「大丈夫だよ。………どうせ、父さんと母さんのことだ。僕達ふたりは多分、学校にも戻ることになるよ。結局逢うことにはなるさ。それにアスカはもう、チルドレンの資格を持っている訳じゃない。僕達とは違ってね?逢いに行く理由がないよ」
バンダナを締め直す。
視線を逸らした。
必ずしも本心ではないのだろう。自分に対する言い訳にすら聞こえてしまう。
「お、兄ぃっ。問題は自分から逢いに行くか、どうかってことだよ?」
ぷんすか、だ。
頬を膨らましている。
「アスカが、幸せならそれで良いさ」
声は小さい。
まるで自分に言い聞かせるように言った。
「えっ?」
レイは返した。
沈黙。
「………さて、取り敢えずはマンションに行ってみるとしようか。…………住所の紙は確か、ポケットに…………」
シンジは話を逸らかした。
歩き始めながら、ズボンのポケットをごそごそと。
「ちょ、ちょっと、お兄ぃ、ってば!………もう」
溜め息を吐くと、レイは後を追うように走り出した。
時は止まらない。
月の光が鮮やかに、ふたりの頭上で照らされつつあった。
かすいです。皆様、お元気ですかね?
はて?
Anotherを書こうと思っていたら、どういう訳か書いてしまったのが、
このAfter The Wind。取り敢えず、設定としては第0章のシンがいなくなった後。
さらに二年くらいの月日を流してます。
なんでこう、無謀なことするのか自分でもわからない。
実はこれ、前にやった試作型と同じで、書き続けるかどうかはわかりませんです。
………だったら書くな、と言われそうなんですが。
まぁ、かすいは馬鹿だな〜、と笑ってやって下さい。
自分でも笑っちゃいます。
はははははははははっ。
大嫌いは止まっているし、書き終わったとしても大切な人があるし、
Afterも短編とは言え、まだ終わりきっていない。Anotherなんてヒット記念の
筈が予定を大幅に狂わしてしまっている。
………………ほんと馬鹿だな、かすいは。
今考えている設定としては、
シンジはシンを超えることに拘り、アスカにはこの二年の間に彼氏が出来ています。
レイはシンへの想いを胸に、生きます。カヲル君も出る予定。
使徒の脅威。
あくまでも化け物としての登場です。
倒された使徒の細胞が散らばったと仮定し、その細胞が人に取り付き融合する。
そのために取り付かれた人は精神汚染を起こし、異形へと姿を変え、アダムとリリスの
匂いの残る第三新東京市に集まってくる、と。
スーツは、所謂アーマードマッスルスーツです。
…………最近スプリガンの映画をビデオで見たせいですね、これは。
人工筋肉の代わりに、エヴァの素体の筋肉繊維を流用し、エヴァにシンクロできる
つまり、チルドレンだけが着れる物とします。
シンクロ率が高いほど、筋力も上昇する。そんな感じです。
レイはまだちょっと秘密。…………と言うか、考えていない。
もし、読んでみたい!と思う方がいらっしゃるのでしたら、御一報を。
設定を煮詰めて、頑張ってみたいと思います。
………ただ、その前に他の何かしらを完結させないと。
情けない。
では、またの機会に。
おお、なんとなんとまたもや大胆な世界観。(@_@;) というわけで、かすいさんプロローグありがとうございますー。\( ^ 0 ^ ) 第0章のアフターなんですねー。世界は未だ荒廃しているようですね。 レイちゃんは思いっきり性格変わってますけど、こちらでも何かあるんでしょうか。そこも興味深い所ですねえ。 シンジ君意地張ってないで会いに行こうよ...。( ^_^;)たのむぜ と、ところでかすいさん。アスカ様に彼氏っていう設定だけはご勘弁を.....。ぴくぴく(痙攣) さあ、続きも設定も変更の余地ありとの事ですので、感想をおくるとひょっとしたらアナタの希望が設定に組み込まれるかもしれませんよ。(ニヤリ) 早速送るのだー。\( ^ 0 ^ ) |
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