〜優しすぎるあなたに〜
For Coming Back To You, Dear
第0章 Part,65
By かすい
「…………何よ、うるさいわね…………」
アスカは、くちゅくちゅと目を擦りながら上半身を起こし、耳障りなサイレンに文句を言い出した。
窓は閉めていない。そのためか、必要以上に響き渡っている。対象が音ではなく、人物であったとしたら、相手は三途の川を渡ることになっていた。
目が据わっているのが、傍目にも良くわかる。
昼寝を邪魔されるのは、夜に起こされるよりもどう言う訳か、気分が悪い。
思いきり、殴り飛ばしたくなるほどに。
理屈はわからないが、それこそ気分の問題なのだろう。
風邪を引かないように、とシンジが渡してくれたタオルケットが、重力に、引っかかっていた胸のふくらみから、はらりと落ちる。
別段、寝巻きに替えてはいない。練習時の、レオタード姿のままだ。そのせいか、体のラインがくっきりと浮かび上がり、十四歳にしては豊かな胸に、タオルケットが離れたくなかったのかもしれない。
隣では、穏やかな寝息を付きながら、いまだに起きようとしないシンジの姿があった。
無理もない。疲れているのだ。エヴァのパイロットとは言え、アスカのように正式な訓練を受けてきたわけではないのだから。
しかし。
これだけの騒音の中でここまで熟睡できるのは、並大抵のことではなかった。
小さな子供に向けるような微笑を、微かに浮かべ、アスカは和む。シンに対しては、喧嘩っ早いが、シンジに対しては、どうにも近頃和んでしまう。
何故だろう。
規則正しい寝息。
しばらくの同居のせいなのだろうか。
寝返りを打っている。
それとも、ユニゾンの特訓のせいなのだろうか。
よくはわからないが、どちらにせよ、気持ちは手間のかかる弟のようなものだった。
恐らく、アスカ自身も気が付いてはいまい。
「何なのよ、もう?」
紅の少女は呟くと、時計に視線をやり、セットした目覚ましの時間を確認すると同時に、未だに鳴り続ける音へと意識を向けた。アラームが鳴るまでには、まだ十分な余裕がある。
ふにゃ、と首を傾げた。
「……………非常事態宣言の発令されました。住民の皆様は、速やかに指定、または最寄のシェルターへと移動してください。繰り返しお伝えします。本日……………」
頭が、ぼ〜っとしている。
今まで考えたこともなかったが、自分は低血圧なのだろうか。
そうでもなければ、いつもいつもこれほどまでに寝起きが悪いはずがない。
(大変ね〜、非常事態宣言だなんて………。使徒でも攻めてきたんなら、わかるけど………。って、えっ!?)
タオルケットを引き寄せ、もぐりこむように自分の体にかけ直すと、考えながら、枕に頭を埋める。
しかし。
がばっ、と体を起こすと、辺りを見回した。
非常事態。
この街で、非常事態と言えばたったのひとつしかない。
一気に目が覚めた。瞼を二、三度しばつかせると、耳を澄ます。
確かに聞こえてくるのは、非常事態宣言の発令アナウンスだった。
「うっそっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
アスカは、いきなり叫んで立ち上がると、問答無用ですかさずシンジを蹴り上げた。
「起きろ、この、馬鹿シンジッ!!」
先ほどの和みも何処へやら。
げしげし、とさらに踏みつける。
起きたものも、すぐに気絶してしまうのではないのか、とも思ってしまうが、この少女にはまるで関係ないらしい。
最後にひと蹴りすると、シンジはころころと壁際にまで転がり、呻き声をあげた。
「さっさと起きろっての、この馬鹿っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「いたた…………。何するんだよ、アスカっ!?」
シンジが、壁に打った頭を押さえながら、叫び返した。
当たり前だ。
気持ち良く寝ているところを、突然蹴り飛ばされてみればこうもなろう。何しろ、シンジには何一つ状況を理解する説明がされていない。理不尽に蹴り転がされただけだ。
「何するんだどころの話じゃないわよっ!非常事態宣言がでてんのっ!!ぐずぐずしてる暇なんてないのっ!!さっさと支度なさい、シンジッ!」
アスカは、これ以上ないくらいに簡潔に。
「なっ、…………わかった」
シンジは、すぐにアスカの言葉を理解すると、いきなりタオルケットをたたみ出した。
静寂。
ただ、サイレンだけが。
「…………何してんのよ?」
「いや、片しといた方がいいかなって………」
気が動転しているのかもしれない。
それとも、寝ぼけているのだろうか。
恐らく、後半が正しいのだろう。
もたもたと、タオルケットを。
プチン。
アスカの中で、何かが切れた。
「さっさと、着替えろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
少女の叫びは、とどまるところを知らない。
「楓?」
シンは、初号機がジオフロントから地表に打ち出されると同時に、小さく呟いた。
静かな街並みの中で、佇むのはシンの駆るエヴァンゲリオンだけだ。
ロックボルトが外される。
この声が発令所に届いているとは、考えていない。
通信回線はエントリープラグと繋がってはいるが、どの程度の音量が伝わるのかは、よく知っていることだった。向こうにしてみれば、唇が僅かに動いたのを、スクリーン越しに確認できるか、どうか、くらいであろう。
ましてや、状況を考えれば、その程度のことに気が付くものがいるほうがおかしい。
少なくとも、危険が目の前に迫ってきているのだから。
使徒。
準備していた作戦は、いとも容易く無へと帰す。
ただ、この短時間の間に、住民のシェルターへの避難が終了していることだけが、唯一の救いであろう。
思う以上に、人は逞しいのかもしれない。
ミサト達の慌てふためいている様子が、プラグ内のスクリーンの片隅に、小さくウインドウで表示されていた。
呟きを聞き取る者は、発令所にはいない。
それだけが、事実だ。
どうでも良い。
少年は、苦笑気味に嘆息すると、僅かに首を振る。
前髪が、揺れた。
楓にだけ、聞こえていれば。
今は、良い。
そして、待つ。
間。
それでも、待つ。
間。
しかし、答えはなかった。
(楓ってば?)
シンは、眉を寄せながら、心の内でさらに声をかける。
傍目から見れば落ち着いているが、音色に焦りが混じっているのがわかった。
冷や汗が落ちる。
“ぶ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜”
いきなり、きた。
少女は、可愛い顔を見せながらも、唇を尖らせている。上目遣いにこちらの方を向いているのは、気のせいではなかった。
ご機嫌斜め、と言ったところだろう。
スペシャルAクラスで機嫌が悪い、と理解した。
(………あの、楓?)
恐る恐る、シンは言った。
“………何ですか?”
う〜、と唸り声まで聞こえてきそうなくらいだ。
じっ、と睨みつけてくる。
(出来れば、状況を教えてくれないかな………なんて)
あはは、と乾いた笑いのおまけ付き。
ミサトから作戦に対する指示は、今のところない。と、なると、自分で考えて動くしかない。だから、聞いた。
しかし、何処か卑屈だ。
それとも、元来シンの持つ性格のためなのかもしれない。
僅かに引き気味に、伺うかのように言った。
何かしらの問題があることだけを理解するが、しかし、何を示しているのかが、まるで理解できない。
自分が何かをしてしまったのか、と思ってしまう。
これはもう、性格だ。
間違いはない。
どうして、こんな風になってしまったのか。
笑うしか道は残っていなかった。
“マヤにでも聞いたらいいですっ!”
楓は、言い切った。
どうやら問題は、そこにあったらしい。
ぷいっ、とそっぽを向くと、楓はぶちぶちと何かしら呟いている。
ちらりとシンの方を一瞥すると、今度は指先で、いじいじ、とのの字を書いていた。
“ふ〜んだふ〜んだ、いいもんいいもん”
ひとり、ごちる。
可愛い。
幼児のような仕種が、絶対となって想いを表していた。
簡単だ。
拗ねているのだろう。
何処までも、楓は楓でしかない。
「あのね………………」
シンは、かくんと肩を落とし、小さく言った。と、言うより呟いた。
楓の機嫌を直すのに、散歩とアイス、さらには公園で昼寝を約束されたのは、別の話。
時間はない。
しかし、場所は違えどこの二組。呑気過ぎるのかもしれない。
良いのだろうか。
それとも。
これが道となるのだろうか。
未だ、道は重ならず。
かすいです。
申し訳ないです。今回は、いつも以上に短いんですが、どうしようもありません。
一番の問題は、どうにも上手く、書き出すことが出来ないことです。
頭の中で、ある程度のお話は出来ているんですが、文章が上手くそのシーンを
繋げてくれない。
スランプです。
(某A嬢談:趣味で書いている大馬鹿の癖して、スランプなんて言い訳
するんじゃないわよっ!!)
今回のお話は、何だか書きづらかったです。
もし、ここらがいつもと違うと言うところがあれば、教えてください。
…………なんだかな〜〜〜〜〜〜〜〜?
書いている本人がいつもより違和感があるくせに、それが何処らへんなのか
理解していないのが、性質が悪い。
後はさらに緊急告知、です。
このかすいの大馬鹿の書いている 〜優しすぎるあなたに〜 第0章
このユニゾン編をもって、第一部を終了とさせていただきます。
後、パートいくつでこのユニゾン編が終わるのか、考えていませんが、と
言うよりは考えると泣きたくなるのですが、実は12月後半から
日本に一時帰国することになりまして、しばらく書けそうもありません。
その間、第0章の設定を見直し、さらに手を加え、第二部を始めたいと思っています。
ましてや、スランプ状態でのこのパート65。出したくないくらい出来が悪いし、文章が下手。
…………元々、上手くないですけど。
いつも以上に、ってことで。
ははっ。
…………はぁ。
あ、後、かすいのメールアドレスが変わりました。
………事実は、MSNのメールサーバに接続が上手く出来ないんです。
64以降、かすいに感想メール、または感想フォームを使って送ってくださった
方には申し訳ありませんが、現在、かすいは読めません。
………ごめんなさい。
取りあえず、hot mailを使っていこうと思っています。
アドレスは
です。
こちらの方に、メールはお願いしますです。
添い寝ッスか....。(●> _ <●)いやん というわけで、かすいさん65話ありがとうございますー。\( ^ _ ^ )ども パラレルシンジ君に対する温かいキモチ。う〜ん、なにやら今後にゴロゴロな予感が..。(笑) まあ、でもその後にアスカ様の暴行、もとい愛のムチが入るのはお約束。(爆) おお、なんと今回で第一部終了なんですね〜。帰国後の第2部が楽しみッスね。 さあ、第2部を早く読みたいアナタ。(びしっ) |
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