「ふ」

笑みが微かに唇からこぼれる。

歪む唇、それに反応するかのように回りから人が引いたような気がするのは気のせいだろうか。

手の中にある温もり、彼はそれを離したくないと思う。

そう、この広い国を捜し求めやっと見つけた物なのだ。

ふと、呆然とした顔で彼を見つめている子供の視線に気がつく彼。

彼は、子供に微笑みかけた。

………

 

 

 

「うわぁあああああああああああ」

 

 

 

子供は泣き出し逃げ出した。

残されたのは、パンダのぬいぐるみをその手に抱え、ウサちゃんパジャマを身に纏った、日本人作家、碇ゲンドウ。

彼は彼自身の持つ破壊力を未だ知らない……

そして、それをこの世で最も知る人物は今、最大の危機に瀕していた。

他ならぬ、彼のせいで。

 

まもって守護アスカ

 

第四話

エビチュのお代はいくらなの?(後編)

 

 

目の前に缶ビールの山が築かれて行く。

床には既に父の秘蔵の酒瓶が何本か転がっている。

それに関しては全く罪悪感は覚えやしない。

問題は、今ある彼のお金を消費し築かれて行く、缶ビールの缶の山だ。

彼はこの日始まっていらい、何度目かになる溜め息を吐くのだった。

彼の名前は碇シンジ、今、中国で最も危険な男の息子……

「こら、ばかミサト、がばがばビールを飲むの止めなさいよ」

紅の髪をした少女がビールをむさぼる黒髪の女性を怒鳴りつける。

一瞬、シンジの目には彼女の姿が天使のように映る。

そう、不幸から彼の身を護る天使の姿に……

彼を不幸から護ると言って少女がわっかの中から出現しはや一月ほど、彼女の姿がこんな風に見えたのは初めての事だった。

だが、それも一瞬。

「こんな事でお金を消費したら、アタシが買う服の数とハンバーグの出る回数が減るじゃない」

一瞬希望により上げかけた顔を再びテーブルに突っ伏すシンジ。

どうやら彼は不幸な星の下に生まれたらしい。

「いいじゃない、アスカ、硬い事はいいっこ無しよ、ね、シンちゃん」

ミサトと呼ばれた女性は彼女がアスカと呼んだ紅の髪の少女の言葉を気に居た様子もなく言う。

彼女にとってお酒は水の代わりに過ぎないのだから。

「ああら、切れちゃった」

自分の背後の箱のビールが無い事をミサトは確認すると手もとの携帯電話にちらりと視線をやる、すると、携帯電話に生えた手が自らのお腹のボタンを押して行く。

異常な光景であるがこの場に居る人間に戸惑った様子は全くない。

打ち込まれた番号は先程から数度打ち込まれている酒屋の電話番号。

「あ、酒屋さん、このビール、もう三ケース追加お願い」

そして、電話は自らの足でもってミサトの元へとやってくる。

その通話口に向かい、慣れた調子で注文するミサト。

慶幸日天ミサト、彼女はもう完全に現代に馴染んでしまっているらしい。

シンジの望むべく形ではなかったが……

 

アスカのビンタから過ぎる事数分。

起きたシンジはアスカとミサトから説明を受けた。

曰くミサトは太陽を司る精霊で主人に幸せを授ける事を仕事ととしている事。

そして、アスカとは千年来の知り合いであるという事などを……

二人はこれまで一緒の主人に仕えた事はなく、今回が一緒の主人に仕える初めての事だという。

その事態を、アスカは呆れ混じりにこう表したのだった。

「要するに前代未聞の日天月天同主ってわけよ、ホント、アンタってとことん幸運な人間みたいね」

そう、彼は一応幸運な人間らしい。

アスカとミサトの認識によれば……

作者自身、彼女等に不幸から護る守護月天の名と幸運を与える慶幸日天の名を与えた事を後悔し始めているから、シンジが今感じている認識は非常に正しい物だろう。

ま、彼にとっては全く慰めにならないだろうが。

話を戻そう、ミサトとアスカの語る事によるとミサトの力は物に命を吹き込む事。

先程の電話が言い例だろう。

彼女が黒天筒(ミサトが出てきた筒)を用い念を込めてやるとあらゆる無生物は命を吹き込まれ彼女の下僕となるのだ。

そして、その事情説明を経て、シンジとアスカの現代に対する説明を経て、先程のシーンへと至るわけだ。

 

「それにしても、ねえ、まさか千年近くもたって、またこの遠い異国の地でアスカに出会うなんて、いやあ、めでたいわねぇ」

そんな事を言いつつまた、エビチュと書かれた缶を開けるミサト、最早千年来の再会も彼女にとっては飲む口実でしかないらしい。

それを呆れた目で見るアスカ、相変わらずのミサトの酒豪ぶりに開いた口が塞がらないといった感じだ。

「ミサト、いつも、あんたが出現するたびに主人の家が酒代で傾くといううわさは本当だったのね」

「い、いやあねえアスカ、アンタそんな噂を本気にしていたの、主人に幸せを運ぶ役目であるこのアタシ、慶幸日天ミサトが、そんな悪行を働くわけ無いじゃない」

大量の缶ビール空缶の山の上でそんな事を言っても欠片も説得力を感じはしない。

シンジはそんな事を思ったが口に出しはしなかった。

言えば更に禄でもない事になるという事はここ一月程のアスカとの同居生活で身にしみてよくわかっていたから。

しかし、そんな彼の気遣いは無用の長物だった。いや、無駄だった。

そんな事を全く気にも留めない人間、いや精霊が一人この場に居たのだから。

「あのさ、ミサト、その空缶の山の上でそんな事いったって、微塵も説得力無いわよ」

「うう」

図星を突かれぐうの音も出ないミサト、そこに更にアスカは追い討ちをかけて行く。

「だいたいね、家事も出来ない、料理は殺人料理、そんなんで良く幸福の使者だなんて……」

「むう、アスカには言われたくないわよ大体、この平和な世界で、不幸から身を護るアンタの力が役に立つというの」

痛い所を突かれ思わず返したミサトの言葉、瞬間止まる、アスカの言葉。

しまったと言う顔をするミサトだが時はすでにもう遅く、アスカは無言のまま部屋から駆け出していた。

「アスカ!!」

ミサトが声をかけるより早く、シンジは動いていた。

成すべき事をなすために、それを見て、ミサトは小さく苦笑する。

「ふ〜ん、そう言う事か、苦労するわよ、シンちゃん」

いつに無く真剣な顔をしながらミサトは一人呟くのだった。

 

 

「来々、離殊光(りしゅこう)」

言葉と共に彼女の持つ支天輪から光が零れる。

光と共に現れたのは、おさげ髪の小さな女の子、顔のそばかすがチャームポイントといった所だろうか。

「らしくないかしらね、ヒカリ」

彼女、アスカの手の上に現れた小さな女の子は無言でプルプルと首を横に振る。

アスカが今居るのはシンジの家の屋根の上、時々彼女はここに昇っていたのだ。

ここから見る星空と、街の光はとても綺麗だから。

「ねえ、ヒカリ、やっぱり私…支天輪に帰った方がいいのかもね」

くしゅん、小さなくしゃみがその場に響く。

ヒカリ、と呼ばれた小さな女の子が零した物である。

「あ、ごめん、ヒカリ、ここ寒いよね」

言いながらアスカはそっと彼女を胸の中に抱きしめる。

「でも、もうちょと、ここに居させて」

そっと瞳を閉じながら彼女が想うのは、この家に最初に来た時の事。

そして、その時自分が言った言葉。

 

『アタシは支天輪に帰るわ、いつかまた、心の清い奴に巡り合う日もあるでしょう』

 

「なんて、前はあっさり言ってさっさと支天輪に帰っちゃったのにね」

そう、結局戻ってきてしまったけれども、彼女はそう言い、一度は少年の下を去ったのだ。

でも、今は……

「ここにいても何も出来ないのに、ここに居る理由なんて何も無いのに……」

(帰りますってアタシ、きっと言えない)

「アスカ……」

背後から聞こえてきた声に振り向けば、そこにあったのは少年の姿。

彼女を少しずつだけれども、変えつつある、彼女の主。

「何よ、役立たずのアタシなんてほっといてさ、ミサトと仲良くやっていれば良いじゃない」

アスカが放つ、彼女の本心とは正反対の言葉。

シンジは、一瞬、彼女へと歩み寄ろうとした足を止めるが、でもそれも一瞬。

彼だって少しずつ変わっているのだ、目の前に居る、この少女と出会って。

「隣り、良い?」

「勝手にすれば良いでしょう」

「じゃあ、勝手にする」

ぷいと、顔を背けたアスカの隣りに、そっとシンジは腰を下ろす。

そして、いまだ顔を背けたままの少女に向かい言葉を放つ。

「前もいわなかったっけ、アスカと初めて逢った時、僕は君がそばに居てくれればそれだけで良いって」

彼の思いを込めた言葉、それはゆっくりと少女の心に染み込んで行く。

想いと、胸に広がる暖かさと共に……

「シンジ……」

背けていた顔を少年の方に向ければ、そこにあるのはシンジの黒い瞳。

交錯する、蒼と黒の視線。

「あの、その、ね、僕がアスカにここに居て欲しいのは、護って貰えるからじゃなくて……じゃなくて……えっと、その」

自分がその先に言おうとした言葉に気がつき、真っ赤に染まるシンジの顔、そのまま、上手く言葉が言えないまま、ちらりとアスカの方を向けば、そこにはいつも通り微笑んだ彼女の顔があった。

「ありがと、シンジ」

 

 

そんな二人を見つめる、怪しい影が一つ。

「あっちゃあ、らぶらぶね、二人とも」

ご存知慶幸日天ミサトその人である。

「う〜ん、下手すれば、私が当てられるだけという良くある終わりになってしまうし、シリーズに成ってしまう、それは、作者の望む所でもないはずね」

謎の言葉をぶつぶつと呟くミサト。

まあ、作者の意図を汲んでくれるというのなら私は嬉しい限りなのですが。

「これね!!」

ベランダの側にあるトランポリンをみつめ、にやりと唇を歪ませるミサト。

はっきり言って、悪人そのものである。

「ふふふふ、私を三十路だとか、一人物ではぐれさせようとしてもそうは行かないんだから、私の綿密で完璧な計画を、味わうが良いわ、アスカ」

なんか、自分で自分を追いつめて、一人いっちゃっているミサトさん。

彼女はずりずりとベランダに立てかけてある梯子の足元にトランポリンを持っていきます。

はあ、原作を知っている方には落ちが見えたかもしれません。

そして、梯子から下りてくる足が一つ、そして、それがトランポリンに触れた瞬間、ミサトの手の中の黒天筒が光を放ちます。

ぺちん

「あう」

どさどさどさ

そんな声と、だれかが植木の中に落ちる音が響きます。

「ふふふ、ははははははは、このトランポリンはもうアタシの下僕、当分外で頭を冷やしてなさい、アスカ、ふふふふ、しんちゃ〜ん、おね〜さんと良い事……って、何であんたがここに」

そこにあったのはミサトの予想した顔ではなく、彼女の千年来の知己の少女、守護月天アスカ、ミサトはおそるおそる、ベランダの淵から庭を覗き込む。

「あ、ミサト、アタシさここにこれからも居る事にしたから、今帰ったらあんたに言われて逃げ帰るみたいだからね、あれ、シンジは」

「あは、あはははは……」

何とか笑いを見せるミサトさん、顔が引き攣って見えるのは気のせいでしょうか。

そんな彼女の様子を疑問に思ったアスカは彼女が先程からちらちらと気にしているベランダより下を覗き込みます。

「きゃああ、シンジ!!」

 

 

庭の植え込みの中に落ち、どうやら怪我らしい怪我はなさそうなシンジ君。

そんな彼の唇から言葉が漏れます。

「父さん、お願だからもう、何も送ってこないで……」

 

続く

 

 

後書き、もとい懺悔の言葉

 

ははは、ど、どうもJ−wingでございます。

近頃は時の流れの速さをしみじみと感じております、ああ、お茶が美味しい(爆)

って、ごめんなさい、すぐになどと言っておいて、守護アスカ三話後編ようやく、書き上げました。皆、もうお話なんて忘れちゃっているでしょうね、はははは。

何せ半年ぶりの新作です。ごめんなさい、ごめんなさい。

次はもう少し早く書き上げますから、見捨てないでくださいね。

それでは、次こそはもっと速くに書き上げる事を祈り筆を置きたいと思います。

それでは、また……

(第五話へ)



ぐははは、相変わらずむちゃくちゃな設定。\( > 0 < )おもしろいッス

というわけで、J−wingさん守護アスカ第三話ありがとうございますー。\( ^ 0 ^ )ふぁんしーおやじー

ゲンドウやばすぎ。中国の人たち何人精神汚染くらったんだろ。(笑)

そして、ついにでてきましたね。トラブル大好き三十路ミサトさん。
さあ、青い果実(爆)を喰らおうと待ちかまえてる三十路女の魔の手から、アスカ様はシンジ君を守ることができるのか!?(笑) 次回後編必見ですね。

ところで、アスカ様のちゃいなな胸の中。シンジ君うらやまし....。ぐじゅるるる

というわけで、早速J−wingさんに感想&応援を書いて続きを書いて貰うのだー。\( > 0 < )/ちゃいなななー

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ここから是非感想を送るのだー。\(●> _ <●)おーっ

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