とんとんとんとん
今日も碇家の台所からリズム感ある音が聞こえてくる。
台所を舞っているのは少年、黒髪の中性的な印象を持った少年だ。
彼〜碇シンジ〜はご機嫌な様子で台所の中を飛び回っている。
誰でも自分の料理を楽しみにしてくれている人がいると言うのは嬉しい物だ。
だからシンジはご機嫌だった。
自分の料理を美味しいと言って食べてくれる、一人の少女がいてくれるから。
「おはよう」
お昼寝をしていたらしい彼女が眠気眼でキッチンにやってくる。
そして、手に持っていた包みをシンジに渡す。
「そこに材料が入っているから、最上級のハンバーグを作ってね」
にっこりと微笑みながら彼女は〜アスカ〜は言う。
一瞬その笑みに見とれ、シンジはぽうっとなったが頷くと料理を再開した。
そんなシンジの様子をアスカは満足げに眺めうんと首を縦に振るとテレビのスイッチを入れた。
テレビの事はもうきちんと理解しているので、もうテレビを破壊する事はない。
それで、安心していたシンジの耳に響いたのはテレビから流れてきたこんな声だった。
「最近、第三新東京市内の高級料理店で仕込んであった材料や何かが消えると言う事件が相次いでおります、今日も最高級のハンバーグの材料が二人前、消えるという不可思議な事件が……」
シンジは恐る恐るアスカに尋ねてみる。
「ねえ、アスカ、この材料何処から仕入れてきてるの?」
シンジの問いかけにアスカはきょとんとした顔をした後、答える。
「それはねえ……」
まもって、守護アスカ
第二話 お買い物ってなあに?
「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ」
家の中に響き渡るシンジの絶叫。
「そ、そいつがどこからか集めてくるって」
アスカの手のひらの上に乗った小さな小人、アスカが言うには“星神”をみながらシンジは力無く呟く。
「そうよ、この八穀の手にかかれば最高級の材料が………」
「はあ、じゃあ、さっきテレビのニュースは……」
「それが、どうかしたのシンジ?」
きょとんとした顔をして言うアスカにシンジは大きく溜め息を吐くとぽんと彼女の肩に手を置くと言った。
「……アスカ、今日はちょうど日曜日だし、僕が現代における“お買い物システム”って奴を教えるよ」
「買い物するって言うけど、アスカのあの服じゃあ目立つよな……」
アスカは支天輪から出てきた時から中国のどこかの民族衣装のような格好をしていた。
と、言うわけで目だって仕方が無いと言うわけで、シンジは彼女が着る普通の服を探していた。
「姉さんの服を借りるか、はあ、姉さんもエジプトだかどこかだか行ったきり帰ってこないな」
そんな事を呟きながら “りっちゃんの部屋”とかかれた、プレートの下げられたドアをくぐり、クローゼットの扉を開けるシンジ。
彼を出迎えたのは白衣、ずらっと並べられた白衣……
「はは、見なかった事にしよう」
そういってクローゼットの扉を閉じ、もう一つのクローゼットを開くシンジ。
にゃあ。
一瞬、我を失うシンジ。
そこにあったのは、猫の着ぐるみ、猫耳、どこから調達してきたか、るりる◯の猫スーツまで
ばたんと慌てて扉を閉じ見なかった事にするシンジ。
彼は忘れていたのだ、自分の姉が重度の白衣マニア、猫マニアであった事を……
数刻後、彼がアスカに用意した物は……
“ゲンちゃんの部屋(はあと)”から持ってきた、可愛らしい洋服だった。
って、どこでそんな物手に入れた、碇ゲンドウ。
『ふ、シンジが生まれる前に生まれた子供が女の子だったら着せてやろうと思った物に決まっているだろうが……まあ、シンジはユイに似て可愛らしいから、何度着せてやろうかと思ったか……』
碇ゲンドウ、おそるべし……
どこかから感じるおぞましい気配にシンジは一瞬萎縮する。
何処かでとてつもなく、嫌な事を言われたような気がしたのだ。
頭を振ってその考えを消し去ると、シンジはアスカに用意した服を手渡す。
それをまじまじと見つめるアスカ。
「うーん、まあまあね、来々、女御」
彼女の言葉と共に女官風の小人が二人現われ、彼女の回りをくるりと一周する。
すると、先ほどシンジが手渡した服と全く同じ服を着たアスカがいた。
「はい、シンジ早く行くわよ」
シンジに先程受け取った服を手渡しながらアスカは楽しそうに言う。
一瞬、アスカの姿にぽうっとなっていたシンジだが、我を取り戻すと一瞬手渡された服にきょとんとした顔をしたが、星神を使ったのだろうと納得し彼女の後を慌てて追うのだった。
「シンジ、シンジ、人がたくさんいるわよ」
街に付き、はしゃぎまわるアスカ、そのアスカの様子を微笑みながら見つめていたシンジ。
そして、二人の買い物が始まった。
「シンジのおかげで大体買い物の仕方は分かったわ、アタシ一人で何か買ってくるから財布渡しなさい」
「え、いいよ、教えたからってすぐにできるもんじゃないと思うし」
そんな事を言うシンジにアスカはずずいと顔を近づけると断言する。
「大丈夫よ、任せときなさいって、何か買ってくる物はない」
「じゃ、じゃあ、消しゴムを」
思わずぽろりと答えてしまうシンジ。
「消しゴムね、任せときなさい!!」
そういって元気よく駆け出していくアスカ。
少女は文具店の中を慎重な足取りで歩いていた。
少女の髪は空色、そして瞳の色は赤、俗に言うアルビノと呼ばれる症状である。
少女は慎重な手つきで、商品を手にした鞄の中に入れる。
成功したはずだ、今回も……
胸に一瞬、ちくりとした痛みを感じたがそれを気にせず店外へ向け歩みを進めようとする。
その時、少女の耳にこんな呟きが入ってくる。
「あれ、シンジの奴、お金払うまで店の人に見えるようにお店の人に見えるように手に持ってなきゃいけないって言ってたのに……」
恐る恐る振り向いてみる少女、そこには彼女と同じくらいの年格好の紅い髪の少女、アスカがいた。
ぽんと納得したように手を叩くと、アスカは言う。
「あ、もしかしてここはお金を払わなくていいのね」
「え?」
アスカの唐突な言葉に少女はぽかんとする。
「それじゃあたくさん貰っていこうっと」
言って大量の商品を抱え出すアスカ、徐々に店の視線が彼女等に集まり出していた。
「ちょっとアンタ、こっち来な!!」
慌てて少女は鞄を捨てアスカの腕を取ると店外に向け駆け出した。
店から少し離れた路地裏で一息つく少女とアスカ。
誰も追ってこないと一安心すると少女はアスカに問いかける。
「所でアンタ何なんだよ、いきなり人の邪魔をして……」
「そんな事より、鞄忘れてきちゃって良かったの」
「あんた、私が万引きしていた所、見てたんだろう、そういう事聞くか、普通?」
少女の言葉にアスカはきょとんとしたまま言う。
「万引き?」
「ああ」
一瞬の沈黙。
「万引きって何?」
「え……」
一瞬、再度沈黙が二人を支配する。
しかし、次の瞬間少女はけらけらと笑い出した。
「はははははは、アンタ変な奴ね、私の名前は綾波レイ、よろしくね」
「アタシはアスカよ、よろしくね」
そう言って、にっこりと微笑むアスカ。
「ちょっと、アスカに手伝って欲しい事があるんだけど」
こうして、二人は街に再び繰り出したのだった。
そして、アスカがシンジと別れた公園では一人寂しく彼女を待つシンジの姿があったのをここに記して置こう。
数刻後
「アスカ、遅いな……」
公園のベンチで所在無く佇むシンジ。
ふと、後ろを向くと、青い髪の少女と紅い髪の少女が本屋に入っていく所が目に入った。
一人は言うまでもなくアスカだ。もう一人は……
「あ、あれは学年一の問題児、クラスメートの綾波レイ」
シンジは慌てて二人の後を追うのだった。
「これを見つからずに、店外まで持っていけば、良い事が起こるのよね」
レイに無邪気な顔で問いかけるアスカ。
その無邪気な表情に、ちくりと胸に痛みを覚えるレイ。
それでも首を縦に振り、先程アスカが呼び出した星神コカ、何でも入る無限の胃袋を持った星神の口に本を入れようとするレイ。
「残念ですが、もう見つかってるんだよ」
背後から聞こえた声に振り返るレイとアスカ。
「え、い、碇…シンジ…くん」
ごまかし笑いを浮かべながらとぼけようとするレイ。
「い、いやーん、碇君、奇遇ねえこんな所で何やってるの」
「それはこっちの台詞!!」
シンジの怒声が店内に響き渡る。
「万引きなんて最低だよ、盗んだ物返してちゃんと謝るんだ!!」
そんなシンジの様子をきょとんとした表情で見つめるアスカ。
「い、碇君、そんな事言ってる場合じゃないと思うわよ、後ろでこの娘が出した変な生物、本食ってるわよ」
慌てて振り向き顔を青くするシンジ。
そこに追い討ちをかけるようにレイの言葉が続く。
「私は謝っても良いけど、そいつの事はどう説明する気よ」
「アスカ!!」
その一言にシンジは本を食べ続ける“コカ”をその手に抱えアスカの片手を取って駆け出す。
「逃げるよ!!」
「あ、私を置いて行かないでよ!!」
レイも慌てて二人の後を追う。
公園で荒い息をつく三人。
「綾波、君は何でアスカに手伝わせたりしたんだ、アスカは何も知らないんだぞ」
「何も知らないから手伝わせたに決まってるでしょう、何も知らない奴の方が悪いのよ」
「なんだって、綾波にいわれ……」
そっとシンジの唇に指を差す事によってシンジの言葉を止めるアスカ。
「シンジ、怒らないで、レイは悪い人ではないわよ、アタシは守護月天なんだからそれくらい見ればわかるわよ」
「でも、アスカ万引きって言うのは……」
「レイ、万引きって成功した事ある?」
「まあ、一、二回くらいは……」
その言葉を聞きほんの意志の強そうな瞳でレイを見つめるアスカ。
「すごく良い事、あった?」
ふわりと風が吹きぬけ、少女等の髪を舞い上げる。
レイが口を開いたのはどれくらいたってからだろう。
「いいことなんて、起こるわけ無いじゃん、私は私の格好とか喋り方とか、そんな物で皆、私がどういう人間か決め付けているような気がしてさ、それが何だか寂しかったら、思われている通りの人間になってやろうと思ってやっただけよ、いい事なんて起こるわけ無いわ」
どことなく寂しそうな顔で、そういうレイ、そんなレイに、アスカは本を一冊差し出す。
「え……」
「レイに、あげるわ、これ」
「あんた、まさか、盗んできたのか……その本?」
レイの問いにアスカは首を横に振る。
「違うわよ、レイにあげようと思って買ったのよ、アタシはまだ今の事がよくわからないから、何も言えやしないけど、今日はとっても面白かったから、そのお礼よ」
満面に綺麗な笑顔を浮かべながら言うアスカ。
ふわりと暖かい雰囲気が彼らを包み込んでいた。
「レイ、また遊びましょうね」
そう言って、手を振るアスカ。
それに笑顔で笑って返した後、レイはアスカから受け取った本に目を落とす。
そこには『ドイツ人のすごーい知恵』と、書かれた本があった。
「り、理解できない……ふふふ、ホンと変な奴」
そう言って、レイは笑った。
心の底から、楽しそうに。
「ところでアスカ」
「なに、シンジ?」
「あの本の代金って、やっぱり」
シンジの問いかけに、アスカは笑顔で頷く。
「ああ、もちろんあんたの財布から出したわよ」
「幾らしたの、一体……」
シンジは恐る恐るといった感じで尋ねる。
「確か、一万と二千円だったかな」
「な、何だって、今月はまだ半月近くもあるんだよ、食費が……」
「食費って、まさか……」
シンジはアスカの肩にぽんと手を置くと沈痛な面持ちで言う。
「アスカ、月末は塩かけ御飯の毎日だと思ってね……」
「いやあああああああああああ」
少女の絶叫が夕暮れ差し迫る、道に響き渡った。
続く…のか?
後書きもどき
無謀にも、電波受信作品まもって、守護アスカ、第二話お送りいたします。
今回はミサト=ルーアン登場というご期待に添わず、キャスト変更、レイ=翔子初登場と相成りました。
まあ、ぼちぼちとこちらの方も出していきますので、どうか見捨てないでくださいね。
さてと次回、第三話は“慶昂日天召来”となる予定です。
それではまた……
ちゃいななアスカ様ー!!\(●> _ <●)/たまんねッス というわけで、J−wingさん新連載第二話ありがとうございますー。\( > 0 < )どろぼー(爆) な、何とレイが不良娘ですか。(@_@;) .......ピッタリ。ぷぷっ それにしても、チャイナ服のアスカ様。たまらんですなー。(●^▽^●)ぐへへへ しかし”星神”は、ドラえもんの取り寄せバッグを思い起こさせますなあ。うっとり(←?) ゲンドウの妖しいクローゼットもナイスです。リツコさんもかなり妖しいけど。白衣マニアって...。(笑) オチも良いッスねー。くっくっく、食費が『ドイツ人のすごーい知恵』ですか。合掌(ちーん) さあ、楽しくなってきましたねー。次回他の配役はどうなるんでしょうか。守護月天好きなヒトも他の人も早速J−wingさんに感想を書いて続きを読むのよー。\( ^ 0 ^ )そうよー |
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