「頼むわよ。アスカ・・。」
ミサトは一縷の望みをかけ、初号機を射出した。
エヴァンゲリオンAS
その七
後編
作:ベファナさん
「葛城三佐。」
「何?、マヤ。」
「ゼルエルに返り討ちにあったとおもわれた弐号機なんですが・・。」
何やら言いにくそうに口ごもるマヤ。
「どうしたの?いいから言ってみなさい。」
「通常弐号機が保管されているケージで確認されました。」
「どういうこと?。」
眉をしかめるミサト。
「どうやら開いたままの弐号機の射出口から落下し、
そのまま行動不能に陥ったと想われます。」
「無様ね。目の前の使徒に集中しすぎて足下への注意がおろそかになっていただなんて。」
すかさずリツコが口を挟む。
「どうして射出口ぐらい閉じておかなかったのよ。」
「す、すみません。」
「謝るのは後で良いわ。それで?中のマナの様子はどうなの、大丈夫なの?。」
「先ほどから問いかけているのですが応答がありません。
どうやら、気絶しているものと想われます。」
「そう大丈夫なのね。」
「はい。」
頷くマヤの様子にとりあえずほっとするミサト。
だが、本当の危機は去ったわけでは無かった。
発令所のスクリーンには初号機とゼルエルの対峙する映像が
映し出されていた。
「てりゃぁあああああ。」
初号機を駆るアスカが吠える。
初号機はゼルエルに一直線に飛び込んで行くと、
その直前で飛び上がり、跳び蹴りを放った。
だが、
ゼルエルの持つ触手のような手にその足はたやすく絡み取られ、
初号機はゼルエルを中心として振り回されてしまった。
「こ、このぉ!。」
初号機の中で悪態をつく、アスカ。
しかし、ゼルエルの頭上で振り回されているこの状況ではどうしようもない。
パッ
ゼルエルは初号機を回すことに飽きたのか
その触手を不意に離した。
その拍子で不覚にも、初号機に電源を供給しているコードがはずれてしまった。
遠心力で回されていた初号機は当然の如く吹っ飛んで行った。
荷電粒子砲の元にいるゼロ号機の元へ・・
ドスン!
激しい地響きをたて、初号機とゼロ号機が激突する。
「ちょっと、アスカ!何。人にぶつかってきてんのよ。」
「何よ!こんな所でぼぉっとしてるのが悪いんじゃない!。」
「わ、私はここで相手の隙をつこうと身構えてたのよ!。」
「どうだかね。あの使徒が怖くてここで震えてたんじゃないの?。」
「・・・。」
「・・・・。」
・
・
最初2人の間にあった気まずいムードも
そうして見つめ合う内に次第に溶けだし
不意に2人は微笑みあった。
「どうやら戻ってきたようね、アスカ。」
「あったりまえでしょ。この私がいつまでもへばってると思ってんの?。」
「あら、さっき『どうせ死ぬならシンジの居る初号機がいい』とか
言ってたのは誰だったかしら?。」
「う・・・うっさいわね。」
ほんのり赤くなりながら反発するアスカ。
そんなアスカを見た後、不意にレイは真面目な顔つきになり、
言った。
「お帰り、アスカ。」
・
・
・
「ただいま、レイ。」
アスカもそれに応える。
そして2人は再びゼルエルと対峙する。
「で?どうする気なの?レイ。あの使徒一筋縄ではいかないわよ。」
「だからアスカが来るのを待ってたのよ。」
「どうだか・・。」
アスカがジト目でレイに突っ込む。
「確かにEVA1体であの使徒を殲滅するのは無理だわ。
でも・・2体なら話しは別のはずよ。」
自信満々にそう言い放つレイ。
だが、
無理だった(^^;
「レイの嘘つき、全然歯が立たないじゃないのよ。」
「私にも誤算ぐらいあるわよ。」
精一杯の強がりでそう応えるレイ。
そんなレイをゼルエルの触手が襲う。
「レイ!危ない!。」
それを見ていたアスカが叫ぶ。
だが、時すでに遅く。
レイの駆るゼロ号機の右足が切断された後だった。
「グッ・・・。」
右足から来る痛みを我慢するレイ。
しかし、ゼルエルの執拗な攻撃はそれだけでは終わらなかった。
第二波がゼロ号機へ向かう。
「レイ!今、助けに・・・。」
アスカは急いでゼロ号機の元へと駆け寄ろうとする。
だが、不運は重なるモノで・・
ガクンッ
初号機の稼働電源の値がゼロになり、初号機がその活動を停止する。
「クソォ!。」
今更になって先ほど電源コードを失った事を悔やむアスカ。
初号機は動くことも出来ず、目の前で起こっている
戦いを見守るしか出来なかった。
「クソォ!。」
レイもアスカと同じくその言葉をゼロ号機の中で
紡いでいた。
「レイ!もう無理だ、ここは一旦引こう!。」
ゼロ号機に取り込まれているカヲルから、
声がかかる。
「何、バカなこと言ってるのよ。
ここで私が負けたら身動きのとれないアスカが狙われるのよ。」
「でもあの使徒に勝つ術はこのゼロ号機にはないよ。」
「あるじゃない・・とっておきの武器が・・。」
「まさか・・レイ・・N2爆雷を使うのかい?
ダメだ、あれは危険すぎる。」
N2爆雷はゼロ号機の頭に埋め込まれている。
その威力は原子爆弾約600発に相当する。
レイはカヲルと話しながらも
ゼロ号機を操り、ゼルエルの攻撃を必死になって避けている。
「危険も何も、ここは私がやらなきゃなんないのよ。」
「フッ、昔から変わってないな・レイの強情なとこ。」
「何、笑ってんのよ。これから死ぬかもしれないのよ。」
「なぁに。レイだって死ぬつもりはないんだろ。」
「確かに。」
そう言ってレイは微笑む。
そして、目の前の敵、ゼルエルを見据える。
「葛城三佐!ゼロ号機に埋め込まれている
N2爆雷の安全コードが解除されました。」
「何ですって!。」
悲鳴にも似た声を上げるミサト。
「まさかカヲルが!。」
何かに思い当たったリツコもつられるように
声を上げた。
そして、次の瞬間。
ズドォオオオオオオオオオンンンン!!!!!!
ジオ・フロントの発令所まで響くほどの大爆発が発生した。
「やった?。」
ゼルエルが殲滅されたかどうかマヤに確認するミサト。
しかし、マヤからは期待通りの返答は帰っては来なかった。
「ダメです。使徒、未だ健在。」
チッ!
不意に発令所に響いたその舌打ちは果たして誰のモノであっただろうか。
「レイ・・・・。」
目の前で起こった大爆発を目にしてアスカは涙を流しながら
その名をポツリと呟く。
しかし、その爆煙から再び出現したゼルエルを
前にその瞳は大きく開かれることとなった。
「嘘・・・。」
爆煙を抜け出したゼルエルは一直線に、初号機の、アスカの元へと
向かってきた。
「アスカ!逃げて!。」
発令所でミサトが叫ぶ。
だが、電源の切れたEVAは、糸の切れた操り人形そのものであった。
為す術もなくゼルエルの攻撃を受ける初号機がスクリーンには映し出されていた。
ゼルエルはまずその触手で初号機の左手を切断。
電源が切れているためその痛みがアスカに伝わることは無かったが。
今のままではアスカを待っているものは”死”でしかなかった。
「ひっ・・ひぐっ・・・ぐすっ・・しんじぃ・・・。」
アスカはひたすら迫り来る恐怖に愛しいモノの名を呼びながら涙を流す。
電源が切れているため、今、初号機に何が起きているのか把握することも
できないのだ。
「リツコ、私たちはここで見てるしかないっていうの?。」
「ええ、そうよ。」
感情的になるミサトと対照的に
リツコはあくまで冷静さを装ってはいるが、その体は自分に対する情けなさから
小刻みに震えていた。
「これじゃ、残酷すぎるわよ。」
ミサトは押さえきれなくなった涙を流しながらも
スクリーンから目を離そうとはしなかった。
それは作戦部長としての責任からか・・それとも・・・・
ミサト達ネルフスタッフの見守る中、ゼルエルはその鋭利な触手で初号機のコアを掘り出した。
「何をするつもりなの?。」
「喰うつもりなのよ。私たちがちょうど卵を割って中身を食べるように、、
あの初号機のコアを割って中身をね。・・。」
「中身って?シンジ君を。」
「いえ。ゼルエルが喰らおうとしてるのはもっと深いモノ・・・・。」
「それって・・。」
思わずリツコに聞き返すミサト。
だが、リツコはそれに応えようとはせず、スクリーンをジッと見つめるだけであった。
「シンジィ・・助けてよぉ・・。」
ドンッドンッ
ゼルエルの触手が初号機のコアへ執拗な攻撃を繰り返す。
中のアスカはそのたびに恐怖にその身を震わせる。
ドンッドンッドンッ
「シンジぃ・・・・
シンジぃ・・
シンジ・・
シン・・
ハッ!
「アスカ!?。」
シンジが気がつくとシンジは見覚えのない空間にいた。
周りはただ、真っ白な空間に覆われ。
どちらが上か下か、それすらもシンジには見当もつかなかった。
「ここは・・・。」
そう言ってあたりを見回すシンジに対して、
不意に後ろから近づく影があった。
「目が覚めたみたいだね。」
驚いたシンジが振り向くとそこには
銀髪の少年の姿が、
「君は?。」
「僕かい?僕は渚カヲル。カヲルで良いよ。」
おずおずと聞くシンジに対し、
カヲルは平然と答えを返す。
「な、なんで。君がここに。渚カヲルといえば、ゼロ号機に取り込まれていたはずじゃ。」
「カヲルで良いっていっただろ。 モノ
それに驚くことはないさ。今君と僕は同じ存在なんだから、同じモノ同士、
こうして話せても不思議なことじゃないさ。」
「君と僕とが同じ存在だって?。」
「おや、覚えてないのかい?
君がアスカ君を助けるためにその身をなげうって、初号機と異常シンクロしたことを。」
「そういえば・・・。」
シンジはその時の事を思い浮かべる。
「その結果、君は初号機に取り込まれたってわけさ。」
「そうだったのか・・。」
そう言って納得しかけるシンジ。
ハッ!
だが、すぐに顔を上げ、カヲルに詰め寄る。
「アスカは?アスカは無事なの?。」
「もちろん無事さ。今のところはね。」
カヲルは意味深にそう説明する。
「今の所は?。」
「見てみるかい?今アスカ君がどういう状況に置かれているか。」
そう言ってカヲルは右手を振りかざす。
すると、そこに別の空間が開け、アスカの立体映像が
映し出される。
そこには涙を流しながらシンジの名を呼び続ける
アスカの姿が・・・・・
「アスカ!。」
思わずアスカの名を呼ぶシンジ。
だが、映像のアスカはそれに気づいた様子をみせない。
「こちらから呼びかけるのは無理だよ。シンジ君。
もちろん、あっちから呼びかけるのも・・。
向こうの世界とこっちの世界は完全に隔離されてるんだから。」
「ぼ、ぼくは・・どうすれば・・。」
「さぁね。それがわかれば僕もこんなところにいつまでもいないよ。」
無責任にもそう言い放つカヲル。
「さぁ。どうするシンジ君。また彼女を見捨てるのかい?。」
「また?。」
「おや?これも忘れてしまったのかい?
今から10年前。彼女は初号機に取り込まれる瞬間、君の名を
呼び続けてたんだ。今と同じようにね。
それに今回のことにしても、君は彼女を救ったつもりだったろうが、その結果、
また彼女をこうして追いつめてしまった。君は彼女に対して罪を
どう償うつもりなんだい?。」
カヲルの言葉に胸に突き刺さるような痛みを覚えるシンジ。
「そんな・・・僕がアスカを・・。」
「そうだ、過程はどうあれ、君が彼女を追いつめたんだ。
シンジ君。君は彼女を助ける義務がある。」
「でも・・僕にはどうしたら良いかわからない。」
「念じてみることだね。ここからでれるように・・。」
「ホントにそれでここからでれるの?。」
「アスカ君もそうしてここから出ていったんだ。
まぁ、あの時は嫉妬心からだったけどね。」
カヲルは笑いながらそう応える。
「アスカ・・・。」
シンジはそう言ってアスカの立体映像をジっと見つめる。
「アスカ・・・絶対・・・僕が守ってみせるからね。」
「アスカ・・。」
「アスカ・・
そして、
シンジの体が光に包まれた。
ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ
「シンジィ・・。」
相変わらずゼルエルは初号機のコアへと執拗な
攻撃を仕掛けていた。
アスカは両耳を塞ぎ、涙を流し、うずくまるようにしてシンジの名を呼びつづけていた
「くそぉ。私たちはこうして見ているしかないっていうの。」
「残念ながら、あの場に居ない私たちに対抗手段はないわ。」
その拳を握りしめ、スクリーンを食い入るように見つめるミサトに対し、
相変わらずリツコはクールにスクリーンを見つめていた。
そこへマヤから驚くべき知らせがはいった。
「大変です!初号機のシンクロ率が再び上昇を開始しました。」
「「何ですって!。」」
声を揃えて反応するミサトとリツコ。
「どういうこと?初号機の電源はとっくにきれていたはずよ。」
「わかりません。でも・・あ・・シンクロ率、20%・・30%・・・
まだ上がります・・50%・・・70%・・・80%・・・・・。」
固唾を飲んでその数値を見つめるミサトとリツコ。
そして、ついにシンクロ率が100%へと
到達した。
「初号機、起動します!。」
マヤの叫びと共に、初号機が動作を開始する。
初号機はまず、迫り来るゼルエルの触手を片手で鷲掴みにすると、
そのままぐっと引き寄せ、遙か後方へと蹴り飛ばした!
発令所はただその光景に息をのむばかりであった。
アスカが気がつくとエントリープラグの中には光が満ちあふれ、
例の使徒がコアを叩く耳障りな音も聞こえなくなっていた。
不思議に思ったアスカが恐る恐る目を開けると
そこには・・・・アスカの一番逢いたかった男の瞳が、一番愛しい男の瞳が
自分の顔をのぞき込んでいた。
「シンジ?・・・・。」
恐る恐る問いかけるアスカ。
自分が夢でも見ているのではないかと思ったのであろう。
だが、次の瞬間、目の前の男から発せられた言葉によってその考えは霧散する。
「うん、そうだよアスカ。ごめんね、辛い思いばかりさせちゃって。」
アスカの瞳に再び涙が浮かぶ、
今度は先ほどまで流していた恐怖の涙ではなく、
それはシンジと再会できた喜びの涙だった。
「ひっく・・シンジィ!。」
思いっきりアスカがシンジに抱きつく。
「ひっく、ひぐ・シンジシンジシンジシンジ。」
顔中ぐしょぐしょにしながらもアスカは
シンジの体を離そうとはしなかった。
「シンジシンジ・・もう・・もう・・どこにもいかないでねシンジ・・ひっく。」
「うん・・もうどこにも行かないから・・。」
そう言ってシンジはアスカの体を優しく包み込む。
2人はお互いをもう二度と離すまいと
力強く・お互いを抱きしめあった。
ふと、シンジはアスカの頭を抱きかかえながら
おもむろに、体勢を整えている目の前の使徒「ゼルエル」を
睨み付ける。
(お前だけは絶対に許さない!)
アスカを優しく抱きかかえながらも、
シンジの怒りは頂点まで来ていた。
結果・・
使徒ゼルエルは
初号機の右手でその体を貫かれ・
本当に呆気なく殲滅された。
<エピローグ>
「ねぇ、シンジ?あの時の約束覚えてる?。」
使徒殲滅後、アスカが不意に口を開く。
「約束?もちろん覚えてるよ。僕がアスカとの約束を忘れるはずがないじゃないか。」
「えへへへへへ。」
先ほどまでの涙はどこへ行ったのか。
アスカはホントにかわいい顔で微笑む。
「(やっぱりアスカは笑った顔が一番かわいいな・・)。」
シンジは顔を赤らめながらその笑顔に見入る。
「どうしたの?シンジ。」
あえ
「いや・・アスカとまた再会て本当に良かったなって。」
「なぁに当たり前のこといってんのよ。さぁシンジ、さっさと家に帰ってヤるわよ。」
「はいはい、今夜は寝かせないからね、アスカ。」
そうして、2人は寄り添い、2人のぬくもりを再び確かめ合った。
<その7 完>
どもども、こんばんわ。ぼく、ドラえぽんです。
ベファナさん、ありがとうございますー。\( ^ 0 ^ )/だだだだんけ
うおおおー、すっごい面白かったー。
一時はどうなることかと思いましたよ。動かなくなった初号機とアスカ様が攻撃されてた所なんてもうはらはらでたまりませんでした。
しかし、最強の使徒ゼルエルも二人の愛にはかなわなかったんですね。ぐふふふ、ナイスですよー。\(●>
_ <●)
レイとカヲルもいい味出してました。
あと、二人が相手の名前を必死に呼び続けてる所なんてすごく感動しちゃいました。シンジ君が戻ってきて良かったね、アスカ様。
さあ、こんな素晴らしい作品を書いてくれたベファナさんに是非感想を書くのだー!!!うーん、感動だなー。
ベファナさんへの感想はここです。
または簡単感想用掲示板へどうぞ。
◎感想用フォームです。2,3行の感想でも作者さんは嬉しかったりするのだ。