エヴァンゲリオンAS
その六
作:ベファナさん
「パターン青、使徒です。」
伊吹マヤが静かに告げる。
発令所中央モニターには白と黒のコントラストが鮮やかな球体の使徒の姿が映し出されていた。
「そう、初号機は?。」
「ただいまケージで待機中。」
「ただ・・・。」
語尾を濁すマヤ。
「『ラブラブモード』に入っているため、中との通信は不可です。」
「そ、そう・・・・(^^;。」
「それにしても指令も良く『ラブラブモード』なんて許したわね。
こっちからの呼びかけに答えられないなんてまるっきり無駄じゃない。」
リツコは信じられないと言った口調。
そもそも、『ラブラブモード』とは、
シンジとアスカがよりラブラブになるために
映像だけでなく音声などの外部との接触をいっさい排除、二人だけの世界をエントリープラグ内に作ることである。
「ま、まぁ愛し合う二人なら仕方のない事じゃないですか。」
「マ、マヤ・・・アンタの口からそんな言葉が出てくるとは思ってなかったわ。」
リツコはどこか恐ろしいモノを見るような目つきでマヤを見ていた。
「だとしたら・・リツコ。弐号機の準備は?。」
「ダメね、パイロットの首の捻挫がまだ治りきってないわ。」
「じゃあ、ゼロ号機は?。」
「また暴走させたいのならどうぞ、その場合第5、第6芦ノ湖が誕生するのは
覚悟しとくことね。」
「使えないパイロットばっかね・・・。」
呆れ顔のミサト。
「リツコ、いい加減に早く4thチルドレンを
見つけてきなさいよ。」
「目下”全力で”捜索中よ。もう少し待ちなさい。」
「出来るだけ急いでね。それから・・・・今度は”まとも”なパイロットをお願いね。」
「わかってるわ。」
二人の会話にはある種の堅い決意が盛り込まれていた。
シンジ君?
シンジ君?
「シンジ君。」
「何ですか?ミサトさん。」
ようやくエントリープラグ内のシンジと発令所の回線がつながった。
『ラブラブモード』に介入するには根気よく呼び続けるしかないのだ。
「シンジィ。もっとぉ。」
不意に二つをつなぐスピーカーからアスカの甘ったるい声が響く。
(何をやってたんだ、お前ら(^^;)
「シンジ君、緊急事態よ。使徒が直上に現れたわ。」
さすが作戦部長、アスカの声に動じもせず会話を続ける。
顔が少し引きつってはいたが・・
「また、ですかぁ?、今良い所なんですから邪魔しないでくださいよ。」
「シンジィ、早くぅ。」
またもやアスカの甘い声・・・・(^^;。
「と、とにかく。この作戦が終わったら好きなだけヤらせてあげるから。」
ミサトの言葉にマヤが思わず顔を赤くして顔を両手で覆いうつむいてしまう。
リツコも「よく言うわね・・。」といった表情でミサトを眺めていた。
「仕方ないですね・・・絶対ですよ。」
力強いシンジの口調。
「約束するわ。」
ミサトもそれに力強く応える。
だが、その背中にはどこか哀愁が漂っていた。
「アスカ、聞いたとおりだよ。」
「えぇ〜。」
シンジの台詞に思わず声を上げるアスカ。
「仕方がないよ。帰ってきたらいっぱいしてあげるから。」
それを優しくなだめるシンジ。
「約束よ。」
「うん、約束。」
そのまま二人はお約束の口づけを交わす。
そしてたっぷり
10分後・・・
「EVA初号機発進。」
少し疲気味のミサトの号令に従ってゆっくりと初号機が地上へと送り出された。
今回は前回の失敗も踏まえてリフトによる射出は控えられた。
「ミサト・・・がんばるのもいいけど、がんばりすぎると又しわが増えるわよ。
赤城リツコは涙を流しながら号令をかける同僚に哀れみを込め、
声をかけた。
「いい?シンジ君。使徒の力は未知数よ。
上に出たら距離を置いて。パレットガンを出すからそれで牽制するのよ。」
ミサトはいつものようにエントリープラグ内のパイロットに
マニュアル通りの言葉をかける。
だが、
中の二人にはもちろん、そんな声は届いてはいなかった。
「行くよ、アスカ。最初からATフィールド全開。62秒でけりを付ける。」
「ええ、わかってるわ。早く帰って・・ね。シンジ!。」
「う、うん。」
相変わらずの二人、だが今回に限っては、これが二人に取って不幸をよぶ結果になってしまった。
ビルの間を縫うように進む使徒に気づかれないように
初号機はゆっくりと近寄って行く。
この時二人はお楽しみを邪魔されたことで少し焦っていたのかもしれない・・
使徒に十分接近した初号機は有無を言わさずパレットガンを連射。
「シンジ君!ちょっと待ちなさい!。」
発令所にはミサトの叫ぶような声がまた響いた。
だが、時すでに遅く・・
パレットガンの弾幕は球体の使徒に当たることなく、
使徒の体をすり抜けた・・・いや、使徒の体が消えたと言った方が適切であろう。
そう思った矢先、突如として初号機の足下に黒い影が広がった。
「「な、なん(によ)だこれ。」」
そして、次の瞬間にはその黒い影は初号機をゆっくりと飲み込み始めた。
「シンジ君!逃げて!。」
発令所にいる自分には叫ぶことしかできない、
そう思うとミサトは自分がとても情けなく感じた。
それはリツコやマヤ、その他のネルフのスタッフも同じ思いであった。
だが、諸ネルフスタッフの叫びも虚しく、初号機は
そのまま黒い影の中へと消えていった。
「影は現在。初号機を飲み込んだまま、半径約2kmで止まっています。」
伊吹マヤとは同僚に当たる日向マコト(独身)が報告を行った。
「使徒本体は下に広がっている影、上に見える球体が逆に使徒の影と
言えるわね。」
リツコがマコトの後を補足する。
事態は決して良いとは言えなかった。
「もし、シンジ君とアスカが初号機をむやみに動かさず、生命維持モードで
耐えていれば16時間・・いえ、乗ってるのは二人だから8時間、生き延びることができるわ。」
「あと5時間か・・・・。」
ミサトは爪をかむ仕草をしながら自分の力の無さを悔やんでいた。
「それで?初号機を救出する方法は?。」
「それなんだけど。一番手っ取り早いのがレイの乗り込んだゼロ号機を
あの中に放り込んで暴走させる方法なんだけど・・・。」
リツコはそう言った後、横にいるレイをのぞき見る。
それに対してレイは
舌を出すと。
「イーだ!私は絶対にイヤだからね。」
と、それに反発する。
「そう、ならN2爆雷をあの中に放り込むしかないわね。」
「正気なの?。」
ミサトは心の底からリツコにそう問いかけた。
「ええ、ゼロ号機と弐号機で使徒のATフィールドを中和、
そこにN2爆雷を放り込んで爆発させれば最低でも初号機を”回収”
する事はできるわ。」
「それじゃ・・・中の二人は・・・。」
サァーと音を立てるようにしてミサトの顔が青ざめる。
「仕方ないでしょ。今回は明らかにあの二人のミスなんだ・・・・。」
パァーン!
リツコが言い終わる前に、ミサトの平手がリツコの頬をとらえた。
「何!言ってるのよ。」
明らかに怒りを帯びたその声がリツコに叩きつけられた。
これには他のネルフスタッフも同じ種の怒りを覚えていたので
ミサトを止めずに成り行きを見守っていた。
が、その思いは簡単に裏切られる結果となった。
「そんなことしたらまた給料減らされるじゃない。
もっと良い案出しなさいよ。」
結局それかい・・・
その時ネルフスタッフの思いはきれいにユニゾンした。
「アスカ・・大丈夫?。」
「うん、・・シンジが居てくれるから。」
アスカはシンジの腕の中にしっかりくるまれながらそう答えた。
「でもここは一体・・・。」
シンジは腕の中にいるアスカから目を離すと
周りの景色に見入った。
初号機の周りには何も無く・・ただ虚空の空間が広がるのみであった。
「シンジぃ、私たちどうなるの?。」
腕の中のアスカが心配げに声を上げる。
「大丈夫だよアスカ。きっとミサトさん達がなんとかしてくれるよ。」
「ミサトが?ホントに?。」
「うん・・たぶん・・。」
自信に満ちてそう言ったシンジも上目づかいのアスカに問い返されると
急に自信を失った。
(あのずぼらなミサトさんだからなぁ・・・)
「ハックシュン!。」
「どうしたの?ミサト。風邪?。」
「ちがうわ。きっとどっかのいい男達が私の事を噂してるのよ。」
「心配した私がバカだったわ。」
「なによ。」
ブルッ
不意にアスカがシンジの腕の中で震えた。
「寒いの?アスカ。」
「うん・・ちょっとだけ。おかしいよね、シンジに暖めて貰ってるはずなのに。」
シンジはどこか弱々しいアスカの声を聞いてから、アスカに見られないようにそっと
生命維持装置をチェックする。
「あと10分か・・・・。」
思わず、顔をしかめるシンジ。
「どうしたの?シンジ。」
「いや、なんでもないよ。」
シンジはアスカを心配させまいとそうは言ったものの事態は非常に深刻で
あった。
(くそっ・・ミサトさん何やってんだ。早くしないと・・・アスカが・・)
シンジは自分の身のことよりもアスカの身の方を案じていた。
「シンジ・・・どうしたの?怖い顔して。」
「え!?怖い顔なんてしてた?。」
「うん・・何か思い詰めた顔してた。」
「そう・・ごめんねアスカ。よけいな心配かけちゃって。」
「別に・・・なれてるから平気よ・・・・・。」
アスカの声は明らかに弱々しいものになっていた。
(アスカ・・・・・)
シンジの両目から涙がこぼれLCLへと溶けて行く。
「シンジ?・・・・何故泣いてるの?。」
「・・・・・・・。」
思わず押し黙るシンジ。
「ダメよ、シンジは笑った顔が一番素敵なんだから。」
「アスカ・・・・・・。」
その言葉を聞いたシンジの両目からはより大量の涙が流れることとなった。
(イヤだ・・・もうアスカを失うのは・・・)
(あの時みたいにアスカを失うのはもう沢山だ。
絶対に死なせるもんか・・)
シンジはアスカの体を包み込むように抱きしめる。
(アスカ・・・僕の命に代えてもきっと助けて見せるからね。)
(絶対に・・・・)
そして
・
・
・
・
シンジの想いに呼応するかの様に・・・初号機の両目が光った・・・・・・
・
・
・
・
・
・
「準備は良い?。」
「いつでも良いわよ。」
気乗りのしない返事でミサトに答えるマナ。
使徒の本体の影を囲むように今、N2爆雷を持った
ゼロ号機と弐号機が対峙している。
「マナ、しっかりしなさい。これは救出作戦なのよ。」
「わかってるわよ。そんなこと。」
やはりマナの声にはいつもの覇気がなかった。
「レイもいいわね。」
「ええ。」
やはりこちらも同じ様であった。
「では、作戦かい・・・・。」
ミサトが号令を発しようとしたときだった。
突如使徒の本体である影が脈動を始めた。
「なんなの?。まだ何もしてないわよ!。」
叫び声をあげたのは珍しくミサトではなくリツコの方であった。
だが、その叫びに答えるモノは誰一人として存在しなかった。
ネルフスタッフの見守る中、影の脈動は激しさを増し、地割れを起こし・・・
・・・・・不意に頭上に浮かぶ使徒の”影”に亀裂が入ったかに見えたとき、
赤い使徒の体液をまとった初号機の頭が雄叫びとともに現れた。
その時起こるべきはずの歓声は初号機に対する恐怖心にを押さえ付けられ、あがることなく
皆、一様に押し黙ったままだった。
そして・・初号機は生還を果たした・・・・・。
アスカ?
アスカ?
「アスカ!。」
え!?
自分を呼ぶ声に瞳を開くアスカ。
「ミサト?。」
エントリープラグ内のスクリーンにはミサトの顔が写っていた。
「アスカ・・大丈夫?。」
「ええ、私は大丈夫よ。シンジが守ってくれたから・・・ね!?シン・・・・・。」
自分を助けてくれたシンジを抱きしめるためシンジの姿を探すアスカ。
だが、そこには愛すべきシンジの姿はなかった・・・。
「イ、イヤアアアアアアアアアアアアアアアア。」
悲鳴を上げるアスカ。
「いや、イヤ、イヤああ・・シンジ、シンジ、シンジ、どこ?、、シンジぃいいい。」
もはや涙で顔はぐしょぐしょに崩れていた。
必死で周りを見渡し、シンジの姿を探しているアスカ。
「アスカ・・聞きなさい。」
「いや、イヤいやぁ・・・。」
ミサトの声も震えている。
だが、ミサトの声はアスカに届いてはいなかった・・。
「アスカ!」
大きな声でミサトがアスカを怒鳴りつける。
ビクッ
これにはさすがのアスカも反応せざるを得ない。
「聞きなさい、アスカ。」
ミサトはアスカの様子を見ながらゆっくりと話し始める。
アスカの表情は脅えるようにミサトの顔をジッと見つめていた。
「シンジ君は死んだ訳じゃないわ。シンジ君は今もあなたの周りにいるのよ。
生体反応はエントリ−プラグの中に確かに二つ確認されてるわ。」
「じゃ、じゃあ。シンジは・・シンジは?。」
興奮のあまりアスカは二の句が告げられないでいた。
そしてミサトが衝撃の事実を口にする。
「シンジ君は・・・・LCLに溶けてしまった・・と思われるわ。」
アスカは愕然となる。
「シンクロ率が一瞬だけど400%を記録してるわ。
たぶんシンジ君一人で出した数値でしょうね。アスカ、あなたを責めるつもりはないわ。
でも、これはシンジ君がアスカを助けるためにしたこと・・・。」
ブチッ!
エントリープラグと発令所の回線が不意に切断される。
「どうしたの?マヤ。」
「どうやら『ラブラブモード』に入った模様、こちらからの通信
受け入れられません。」
チッ
ミサトは舌打ちをならす。
(やはり、話すべきではなかったか・・・。)
「構わん、エントリープラグ内のLCL圧縮濃度を上げろ。」
「指令!。」
作戦中はほとんど口を開くことのない碇指令の発言に驚くミサト。
「どうした?エントリープラグ内の圧縮濃度を上げろ。
このまま子供のだだにつきあっても何も好転はせん。」
「わかりました・・マヤ。」
ミサトがマヤに作業を促す。
直ちにLCLの圧縮濃度が上げられ、アスカの意識を
奪い始める。
「シンジ・・・。」
アスカは失い行く意識の間も、
ただシンジの事だけを考えていた。
「シンジ・・・。」
「シン・・・・・・・。」
「パイロット無事、回収いたしました。」
「そうか・・。」
碇ゲンドウの声の違いに気づいたのは
いつもかたわらで佇んでいる冬月コウゾウだけであった。
「(碇・・・・無理をしおって・・。)」
「それで?LCL内に生存するサードチルドレンの方はいかが致しましょう。」
「対応策がないならしばらくはそのままだ。」
その言葉を最後に碇ゲンドウはその場を足早に後にした。
ミサトは世界最高峰の技術をもっていながらシンジを救うことのできなかった
自分たちの力の無さを実感し、壁にコブシを打ち付けた。
そして、ミサトはしばらくそのまま立ちつくしていた。
初号機に付着した赤い体液を落とすシャワーの音だけが、
あたりを包んでいた。
<その6 完>
どもども、こんばんわ。ぼく、ドラえぽんです。
ベファナさん、投稿ありがとうございますー。\( ^ 0 ^ )/その六だー
っておい。二人がディラックの海に飲み込まれてるじゃないですか。(@0@)ひえー どうなっとるんだ。
それにしても、ミサトとリツコは極悪ですねー。面白いけど。(爆)
アスカ様を思うシンジ君。アスカ様を助けるために.....。かっこいいじゃないですか。
でも、残されたアスカ様が可愛そう....。(
T - T )
さあ、一体どうなってしまうのでしょうか?うう、気になるよー。さあみんな、感想を書いて続きを書いてもらおー。そうだー
ベファナさんへの感想はここです。
または簡単感想用掲示板へどうぞ。
◎感想用フォームです。2,3行の感想でも作者さんは嬉しかったりするのだ。